ご高齢者の方の相続対策として、一番認知されているものとして遺言書があります。
ところで遺言書を何のために書くのか?そう、改めて聞かれるとわからなくなってしまう方も多いと思います。
何のために書くのかが整理できていると、ご自身の想いをちゃんと実現できる遺言を書くことができますので、今回は「遺言書の効果」をまとめて解説致します。
結論から言えば、遺言書による相続対策は有効です。
相続が開始すると、相続人が法定相続分に従って遺産分割協議をすることになります(民法907①)が、生前に被相続人が、遺言書を作成しておくと遺言書の効力が優先します。
遺言では特定の財産を誰が相続するのか、どの割合で相続するのかを決めたり、孫や甥っ子など本来法定相続人ではない人に財産を相続させたりすることができます。なので、適切な遺言書を作成しておけば、被相続人の希望どおりの相続を実現したり、遺産分割協議における相続人間の争いを防いだりできます。
1つ目に、遺産分割協議で紛争が予想される場合には、遺言書作成の必要性が非常に高くなります。
例えば、相続人同士が疎遠であったり、連絡のとれない間柄である場合を想像してみてください。
また、相続財産の大半が不動産である場合も紛争となりやすい傾向があります。不動産はそのままでは分割することができないので、誰が相続をするのか協議が長期化したり、場合によっては不動産を売却して金銭を分ける必要があり、長期化しやすいです。遺産分割協議が長期化すると、その間に相続人の中の誰かに相続が発生したりして、解決困難な事案となりやすいのです。
他にも、相続人の中に認知症などで判断能力が低下している人がいる場合は、そのままでは遺産分割協議を成立させることができずに、成年後見を申し立てる必要が出てくるといったデメリットもあります。
そのようなケースでは遺言書が効果を発揮します。
遺言書が作成されていれば、遺産分割協議をしなくても遺産は遺言書通りに相続されます。また、不動産を売却してその対価を一定の割合で相続させるという内容の遺言も有効です。
2つ目の効果は、事例で見てみましょう。
〈事例〉Aには、妻Bがいますが、二人の間には子供がいません。Aの財産は3,400万円のABが住んでいる自宅不動産と現金が500万円あります。
Aの両親はともに亡くなっていますが、Aには兄Cと弟Dがいます。
この事例においてAが妻のために遺言を作成するメリットはあるでしょうか?
〈解説〉本事例において、Bよりも先にAが亡くなった場合、法定相続人はB、C、Dとなります。
Bが不動産を相続して、自宅に住み続ける場合、Bの法定相続分を超える財産を取得することになり、CやDから代償金の支払いを求められる可能性があります。
Bは代償金を捻出するために不動産を売却することになったり、現金の相続ができずに今後の生活費に困窮する事態が懸念されます。
そこで、Aが生前に「不動産を含む一切の財産をBに相続させる」という遺言書を作成しておくことで、兄弟姉妹には遺留分がないことから全部の財産をBが相続することができるので、有効な対策となります。
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有効な遺言をするには、『遺言能力』と言って、意思能力と同様の判断能力を有している必要があります。(民法961)
つまり、当然のことですが、自分で遺言の内容を理解することができる程度の判断意思能力は必要ということです。
なので、認知症等により判断能力が著しく低下してしまう前に作成しておく必要があります。
法定相続人のうち、配偶者や子、親やこの代襲相続人は遺留分と言って、相続財産の一部を一定の割合確保できる権利を有しています。
この遺留分を無視した遺言を作成しても、遺留分権を持っている相続人から遺留分の回復を請求されることがあり、遺留分をめぐって親族間で深刻な争いを誘発する恐れがあります。
何故なら、遺言書の効力はあくまでご本人が亡くなってから効果を発揮するもので、「遺言書を書いたから生前の対策は万全だ!」とはなりません。何故なら、「生前に判断能力を失うリスク(=資産凍結リスク)」への対策がすっぽり抜け落ちてしまっているからです。
つまり、認知症対策と相続対策は一緒に考えることが重要なので、家族信託や任意後見と言った認知症対策も一緒に検討するべきです。何故なら、どんなに立派な相続対策を考えても生前の生活費・医療費で困ってしまっては何の意味もないからです。そこで、例えば家族信託なら『遺言代用型信託』といって認知症等による”財産凍結リスク”に備えながら、遺言を残したのと同じように相続対策のメリットを享受できます。
家族信託には
・自分が元気なうちに財産を家族に任せておける(認知症対策になる)
・任された家族が、本人のために柔軟に財産を管理することができる
・遺言のように資産の承継先を決めておける
などの機能が備わっているからです。
その他にも『任意後見』という認知症対策もありますので、これらを複合的に考えることで、認知症対策と相続対策のどちらもカバーできます。
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・遺言は有効な相続対策になり得る
・遺言能力の有無や、遺留分の規定には注意が必要
・生前の認知症対策にはならないので、それだけで対策十分とは言えず家族信託や任意後見などの他の制度と併せて考えることが大切
『いくつになっても、安心して暮らしていけるように』
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専門的な見地からのアドバイスは、適切な対策を考えるうえで、非常に重要なものとなります。相続への対策は、遺言・後見・生前贈与・家族信託・保険活用など、様々な専門的な手法を組み合わせて行う、複雑なものだからです。
認知症対策、相続対策のご相談は、是非リーガルパートナーにお任せください。
今日も最後までご覧いただきありがとうございました。
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