近年、民法の改正が相次いで施行されていますが、これらの情報を早めにキャッチして、相続などで不利益を被ってしまわないようにしたり、生前の対策で後悔しないようにしたいものですよね。
現在、相続に関わる重要な民法改正の施行が予定されていることはご存知でしょうか?
今回の民法改正案は、所有者不明土地問題の対策のため2021年2月10日に法制審議会において決定され、2021年4月21日国会で成立しました。
この法改正では、相続登記の義務化が注目されましたが、この要綱案においては、他に遺産分割の期限に深く関係する『特別受益・寄与分の期限』に関する論点も含まれています。これまで、期限がなかった遺産分割についてどのような改正が入るのでしょうか?
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現行民法上は、相続財産を誰がどのぐらい相続するのかという遺産分割協議自体には期間の制限がありません。そのため、10年後でも、20年後でも遺産分割協議を行うことはできます。
しかしながら、相続発生後に遺産分割がされないまま、その相続人にさらなる相続開始があると、権利関係が複雑化します。そのうえ生前に相続人間で贈与があったこと(特別受益)や介護など特別の負担をしていたこと(寄与分)の主張がされると、何年も前の事実について話し合いをしなければならないので、長い間遺産分割協議がまとまらないという問題を招きやすいのです。
それを避けるために、家庭裁判所に遺産分割調停もしくは遺産分割審判の申立をするという方法がありますが、家庭裁判所での手続きは公平性が期待できる一方で、相続人間に感情的な”しこり”を残してしまうこともあります。
また、相続の手続きが放置され10年以上経過しているご家庭には、「関係がよいから」10年以上経過しているケースもあります。つまり、「わざわざ話し合わなくても、権利の変更手続きをしなくても、仲が良いので問題が生じない」というご家庭です。それは素晴らしいことなのですが、果たしてこれから10年、20年、30年経過してもそうであり続けるのでしょうか?一度立ち止まって考える必要があるでしょう。
今回の改正では、遺産分割協議それ自体に期限が設けられたわけではありません。
上記にあげた特別受益や寄与分の主張といった遺産分割協議の複雑化、長期化の原因になりやすい権利主張について、相続開始の時から10年という期間制限が設けられたのです。
つまり、改正により、10年の期間経過後は、家庭裁判所において遺産分割調停・審判を行う場合に、特別受益及び寄与分の主張ができなくなります。
従って、相続人間の合意による遺産分割協議については、従来通り期限が設けられていませんので、10年を経過しても遺産分割協議を行い、相続人間の生前贈与や介護負担を考慮した法定相続分と異なる割合で相続することができます。相続人間で揉めた場合は10年間経過すると特別受益と寄与分主張ができなくなるということにとどまります。
結論から言うと、遺言を書いておくことが有効な解決策になります。「だれに、何を、どれだけ」相続させるかを明確に書いておくこと、生前贈与の有無、介護や生活の面倒を見てくれた等の事情も考慮することが大切になってきます。
遺言で遺贈を行うことによって、法定相続人以外の人物にも財産を残すことができます。
また、付言事項といって、遺言者の気持ち的な部分や、相続割合を決めた理由や経緯も書き記すことで、相続人達の納得感も全然違ってきます。
ただし、遺族が最低限受け取れる割合を法律で定めた「遺留分」には注意が必要となります。
遺言の作成件数は年々増えていますが、年間死亡者数の約1割にとどまっているのが実情です。このような法改正が行われたことで遺言の作成の必要性はますます増していきます。相続への対策にご興味がおありであれば早めに検討しておきたいものですね。
遺言は有効な手段ですが、弱点もあります。そもそも相続への対策は遺言だけで十分でしょうか?
じつは遺言書は、本人が亡くなった時にのみ効果が生じるのです。亡くなる前には、なんらの効果はないものなので、(当然のことながら)生前の認知症対策や資産凍結対策にはなり得ないものなのです。
ですので、「遺言書を書いたから生前の対策は万全だ!」とは、いきません。なぜなら、「生前に判断能力を失うリスク(=資産凍結リスク)」への対策がすっぽり抜け落ちてしまっているのですから!
一方、家族信託なら『遺言代用型信託』といって認知症等による”財産凍結リスク”に備えながら、遺言を残したのと同じように相続対策のメリットを享受できます。
どういうことかと言いますと、家族信託には
・自分が元気なうちに財産を家族に任せておける(認知症対策になる)
・任された家族が、本人のために柔軟に財産を管理することができる
・遺言のように資産の承継先を決めておける
などのメリットがあります。
詳しくは、コチラの記事で記載していますので、確認してみてください。
超高齢化社会の加速に伴い、相続や認知症への対策の需要はますます高まり、政府も法改正などの実施をとおして、問題解決を図っているのが現代の流れの象徴ともいえます。
これを機会に『いくつになっても、安心して暮らしていけるように』今から少しずつ考えてみてはいかがでしょうか。
そして、専門的な見地からのアドバイスは、適切な対策を考えるうえで、非常に重要なものとなります。相続への対策は、遺言・後見・生前贈与・家族信託・保険活用など、様々な専門的な手法を組み合わせて行う、複雑なものだからです。
認知症対策、相続対策のご相談は、是非リーガル・コンサルティング&パートナーにお任せください。
ご相談は、無料です。
それでは、今回はここまでです!
最後までご覧いただきありがとうございました。