2021.09.14

相続登記の義務化と知っておくべき対策とは?

不動産を相続した場合、その不動産の名義を亡くなった方から相続した人に名義変更をする必要があり、この手続きを「相続登記」と言います。

これまで相続登記は「当事者の任意」に委ねられていたので、相続登記がされないまま放置されている土地が増え、問題になっていました。

このような問題を受けて、2021年4月に「相続登記を義務化する」改正法案が可決され、2024年を目途に施行される予定となっています。

このような法改正への対処はもちろんですが、それ以外にも相続の問題を先延ばしにすることには様々なリスクがありますので、今のうちから対処しておくことが必要です。

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なぜ、相続登記を放置してはいけないの?

数次相続による権利関係の複雑化

相続発生後に相続登記がされないまま、その相続人にさらなる相続開始があると、権利関係が複雑化します。

相続登記をするには、相続人全員で遺産分割協議をし「不動産を誰が相続するのか」について話し合う必要がありますが、関係する相続人が増えれば増えるほど、その全員と話し合い、合意をすることが難しくなります。

関係性の薄い相続人や、疎遠になっている相続人の住所や連絡先を調べ、話し合いをまとめるのは非常に困難がだからです。

また、相続人の一部が行方不明になっているケースもあります。

この場合には、行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加する「不在者財産管理人」を選任する手続きが必要です。しかしこの手続は、多くの時間と費用がかかる上、不在者管財人は、相続する権利を放棄することを許容しないという特徴があります。

相続人の認知症で遺産分割協議が長期化

相続登記を放置している間に、相続人の一部に認知症になってしまう人がいたら大変です。

相続人の一部が高齢になり、認知症になって判断能力が低下した場合、その人を含めて遺産分割協議をしても法律上無効となってしまいます。

この場合、相続登記をするには、認知症になってしまった相続人の代わりに「成年後見人の選任」を申し立てる必要がありますが、成年後見人の選任申し立ての手続きには多くの時間と費用がかかるうえ、成年後見制度にはいくつかのデメリットがあります。

また、成年後見人は、認知症になった人の「相続権を保全する義務」があるため、法律で決まっている相続分を相続する権利を主張します。その結果、相続した不動産は相続人全員の共有にすることを余儀なくされ、不動産を活用できなくなってしまう可能性があるのです。

上記のようなことが原因で相続登記未了の土地が増え、所有者不明土地の増加の温床になっているとみて、国が相続登記の義務化へと踏み切ったのです。

相続登記等の義務化ってどんなもの?

相続登記の義務化

不動産の所有者について相続があったときは、相続により不動産の所有権を取得した者は、相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内に不動産の名義変更登記をしなければなりません。これに違反すると10万円以下の過料の対象となります。これは、遺言などの遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した人も同様です。

そして、この相続登記義務化は、法改正後に発生した相続のみならず、法改正以前から相続登記をしていない不動産についても適用があります。

遺産分割後の名義変更登記も義務化される

相続人間の遺産分割がまとまらず、速やかに相続登記ができないときは、民法で定める法定相続人のうちの誰かが、法定相続分で登記を行うことにより、義務を免れることができます。しかし、そのままだと法定相続割合での不動産の共有となってしまっている可能性があるので、法定相続分による相続登記後に、遺産分割協議を行って、遺産を分ける必要があります。この遺産分割による名義変更登記においても、遺産分割の日から3年以内に登記をすることが義務づけられますので、遺産分割により権利を取得した人はこの義務の対象となります。

住所変更登記の義務化

その他に、所有者である個人または法人の氏名(名称)や住所(本店)に変更があった場合の変更登記も義務化されます。それらに変更があった場合は、その日から2年以内に変更登記をすることが義務化され、これを怠った場合は5万円以下の過料が課されます。

相続人申告登記(仮称)が設けられる

ご家族によっては、遺産分割協議の結果、相続人全員の合意がなかなかまとまらない場合もあります。そのような場合に、相続登記義務を免れるためといって、便宜的に法定相続分での登記手続きを行うことは、二度手間になってしまううえに、手間と費用がかかります。

そこで、遺産分割がまとまらないことが原因で速やかに相続登記をできない場合には、相続人であることを申告をすれば相続登記をする義務は免れる制度(相続人申告登記(仮称))が設けられます。この制度が利用された場合には、法務局では登記簿に申告をした者の氏名住所などを記録します。

ただし、この相続人申告登記をしても相続登記を完了したことにはならないので、あくまで一時的に義務を免れることができる予備的な効果があるにすぎません。なぜなら、この手続きは所有権が被相続人から相続人に権利が移転したということを示すものではなく、あくまで「登記簿上の所有者」が亡くなったことを示しているに過ぎないからです。

後日、遺産分割協議が成立し、不動産を相続する相続人が決まった場合には上記で述べたように遺産分割の日から3年以内にその名義変更登記を行う必要があります。

どんな対策が考えられるの?

相続登記を円滑にすすめるには遺言が有効

今回の相続登記の義務化などをきっかけに「相続を円滑に進めるための準備」を始めてみませんか?

相続手続きの複雑化、長期化に備えるには、遺言の作成が有効です。

元気なうちにしておく遺言書の作成は、相続登記の手続きの簡略化や、遺産分割協議が不要になるなどのメリットがあるので、相続手続きの円滑化に効果を発揮します。

その結果、相続手続きの複雑化、長期化を回避することができ、相続登記が義務化されても困ることがありません。

その他にも、色々な効果がありますので、こちらの記事を御覧ください。

数次相続対策には後継ぎ遺贈型の受益者連続信託が有効

相続登記を放っておくと、数次相続が発生し権利関係が複雑になってしまうことは先述のとおりですが、遺言書のみでは「次の世代の承継先しか決めることが出来ません」

例えば、先祖伝来の土地を自分の次の代だけではなく、その次の代やその先の代の跡継ぎを決めておくことは遺言ではできません。

そんな時は、後継ぎ遺贈型と呼ばれる家族信託が有効です。

後継ぎ遺贈型の受益者連続信託は、お持ちの財産を、複数世代にわたって承継先を指定することができる家族信託です。
具体例としては、ある財産を、ご自身が亡くなったら配偶者に承継し、配偶者が亡くなったらお子様に承継するということを生前に決めることができます。

まとめ

・相続の手続きを放置しておくことには様々なリスクがある

・民法改正で不動産取得を知った日から3年以内に手続きを登記・名義変更をしないと10万円以下の過料の対象となる

・同改正で住所変更した場合も不動産登記が義務化され、2年以内に手続きをしなければ5万円以下の過料の対象になる

・法改正以前に所有している相続登記・住所等の変更登記が済んでいない不動産についても義務化される

・元気なうちに遺言、家族信託などの準備をしておくことはメリットがある

以上です。

このような時代の流れや現行制度の改正をきっかけに、自分が元気なうちに「自分の家族にとってどんな制度の活用や生前対策が効果的か?」考えてみませんか?

司法書士リーガル・コンサルティング&パートナーなら遺言・後見・生前贈与・家族信託・保険活用など、様々な専門的な手法を組み合わせて、あなたのご家族に一番最適な対策のご提案をいたします。

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