認知症対策に有効な家族信託ですが、結局何をしたらいいのか分からなくなりますよね。
もしかして、信託契約書を自分で作って公正証書に、なんてお考えじゃありませんか。
お気持ちは分かりますが、焦らないでください。
本記事を読めば、家族信託を検討した時に
「まず初めにするべきこと」が明確になり、最短で手続きを進める方法が分かります。
以下のような方におすすめです。
・他の制度も調べてみたが、家族信託が良さそう
・まず最初に何をしたらいいのか不明。
・スムーズ手続きをするにはどうすればいいの?
目次
家族信託のご相談をいただいていて、やはり良く頂くのが「手続きの流れ」についてのご質問です。
既に認知症の初期症状が見られており、焦っている方もおられます。
まず初めに、家族信託を専門家に相談してから、手続きが完了するまで、「結局全部でどの位の時間がかかるのか」を申し上げます。
早くて1ヵ月
長くて3ヵ月
内容に迷いがあると6ヵ月
です。いかがでしょうか。あなたが思っていたよりも短かったですか?
内容の意思決定が出来ないと、どれだけ時間をかけても完了しませんので、「確かな情報」と「代替手段との比較検討」をしたうえでの「決断」が非常に大事です。
実は、家族信託の手続きの工程は3つだけなのです。
家族信託の設計
家族信託契約公正証書の作成
信託開始のための手続き
このうち、1つ目の「信託契約」だけはどうしても個人差があります。3ヵ月と申し上げましたが、ご事情によってはもっとかかる可能性もあります。
ただ正直言って、家族信託の手続きはこの信託設計がほぼすべてといっても過言ではありません。
家族信託の最大の特徴は、自由に契約内容を決められる点です。
逆に言えば、家族のご事情や財産状況を考慮して一つ一つ決めなくてはならないのです。
なので、この家族信託の設計に必要な要素さえ予め決まっていれば、かなりスムーズに手続きを進められるのです。
そして、家族信託の設計に必要な要素とは以下の7項目です。
どれも非常に重要です。慎重に考えてみてください。
※なお、家族信託は委託者・受託者間だけでできる契約ですが、ご家族との話し合いはお忘れなく!
まず初めに「信託の目的」を決めましょう。
何のために家族信託をするのか、ご本人の想いが最も重要になってきます。一例を下にまとめましたので、よろしければ参考にしてください。
もしも認知症になってしまった時のために、財産を家族に託しておきたい。
子どもたちへの財産の承継を、トラブルの無いようにしたい。
共有不動産があるので、共有者間でのトラブルを防ぎたい。
認知症の配偶者がいるので、後見制度を使わずに生活を守りたい。
子どものいない息子夫婦に財産をわたしたいが、子どもがいる息子夫婦もいるためゆくゆくはそちらの孫に財産がいくようにしたい。
障がいのある子どもの将来の生活を守りたい。
続いて、信託財産を決めましょう。不動産・金融資産・預貯金や株式といった、所有している財産を書き出してみるといいでしょう。
「目的」が決まっていれば、どの位の財産を信託財産にすればいいのかが定めやすくなります。ただし、全ての財産を信託財産にしてしまうと、ご本人(委託者)が自由に使える分が無くなってしまいますのでご注意ください。
お勧めは、「迷ったら多めに信託する」です。なぜなら、信託しても受益権として財産を保有し続けるので、例えばお金を戻してほしいときは「受益権を行使」して、個人財産に戻せばいいだけの話だからです。
あなたが財産を託す側でしたら、あなたが委託者兼受益者となります(贈与税課税を回避するため、最初は必ず委託者は受益者になります)。なので受託者、つまり財産の管理・運用・処分をする人をご家族の中から選びましょう。
受託者となるのに特に資格は必要ありませんが、誠実にあなたの為に仕事をしてくれそうな、心から信頼できる方になって頂くのが理想です。受託者に関しては下の記事が参考になります。
関連記事:受託者になるなら必ず知っておきたい基礎知識【ゼロからわかる】
なお、受託者として信頼できる方がいらっしゃらない場合は、残念ながら家族信託ではなく別の手段を検討すべきですし、信託にこだわるのであれば「商事信託」という信託銀行・信託会社のサービスを、対価を支払って受けるべきです。
次に、信託がいつ終了するのかを決めます。これは「委託者が死亡したとき」などと定められます。委託者が死亡しても、信託を終了させたくない場合は「第二受益者は孫とする」などと定めて何代先でも受益権の承継先を決めておけます。なお、信託法により「30年ルール」と言われる制限はあります。詳しくは下の記事が参考になります。
関連記事:家族信託の失敗を防ぐたった3つのポイント
最後に信託終了後に信託財産を取得する人を決めます。これで最後です。あともう一息ですね。
受益者が亡くなった後に、「だれにどの財産をわたすのか」を決めていきます。
これは遺言と同じ機能ですので、慎重にお考えになって決めてください。なお、非常に重要な注意点として、信託契約の中で財産の承継先を決めることが出来るのは、「信託した財産だけ」です。
「信託しなかった財産」は、信託契約の守備範囲外ですので、それらは遺言や贈与、生前の売買等の別の法律行為で承継先を決めておく必要があります。ちなみに、受益者が亡くなっても信託契約が必ず終了するわけではありません。「第二受益者」を設定しておいて、信託契約を継続できます。
関連記事:もっとあなたの想いを叶える資産承継。「受益者連続型信託」はこう使う!
。
契約書の内容は、書き方を誤ると効力を発揮できません。せっかく作成しても意味がなくなってしまいますので、家族信託の専門家に見てもらいましょう。
さあ、ここまで決まれば、次からの手続きはスムーズに進んでくれるでしょう。
基本的には、専門家の案内に従って進めた方が無難です。
次は、契約書を作成して公正証書にしましょう。
公正証書にする理由は、「契約したときに意思能力がありました」という証拠になるからです。あとで(可能性として)争いになった時に、「そんな契約書は捏造だ」と言われてしまうかもしれません。念のための手続きです。
①公証役場に委託者と受託者で出向きます。
②公証人立ち合いのもと、意思確認をして、契約書の内容を全て読み上げながら確認します。
(司法書士に依頼している場合、通常司法書士も立ち合います)
③内容に間違いが無ければ、実印を押してください。
③契約書をなくさないよう保管します。公証役場には、署名した原本が保管されます。
なお、契約書をなくしてしまっても公証人が再発行をしてくれます。これも公正証書にするメリットですね。
しかし、これだけでは財産の管理を受託者が行えません!預貯金などの資産、不動産をその後管理・運用をしていくために、名義を変更しましょう。
まず、金融資産については、信託専用の口座が必要になります。受託者は「信託財産と自分の財産を分けて管理する義務」があるのです。なので、信託された預貯金などは受託者の口座にいれておけません。信託専用の口座で管理しなければいけません。委託者の口座にある残高も、この専用口座へ送金しましょう。
家賃収入などの金銭も、信託専用の口座で管理してください。
続いては不動産です。本人の名義になっているところに、「受託差・委託者・受益者」がそれぞれ誰になるのかを登記します。
これもかなり重要な手続きです。こうしておけば、例えば不動産の売却や大規模な修繕をするときに「受託者の立場で行います」と言ってスムーズに着手できます。登記簿謄本を見れば本当に受託者なのか、やろうとしていることが信託の目的の範囲内なのか一目で分かるようになるのです。
なお、不動産・金融資産以外の資産や契約の同様に名義変更が必要な場合がありますので、一度調べて頂いて、ご相談ください。(例:火災保険の契約者、固定資産税・水道光熱費の引き落とし口座、不動産を貸している場合の家賃の振込先口座、株式)
以上が、信託の開始までの手続きの流れです。
最初に信託の目的や受託者などを決めておけば、あとは専門家がリードしていってくれます。契約内容に不備が無いか、リスクはないかくまなくチェックして、あなたの想いを叶えるために尽力してくれます。
まずは無料相談をしてみて、本当に家族信託を利用すべきなのか、ほかの制度ではだめなのか、提案を受けられることをお勧めいたします。