2020.04.06

受託者になるなら必ず知っておきたい基礎知識【ゼロからわかる】

「突然受託者になってと言われたけど返答に困った」

「受託者になったら何をすればいいの?」

家族信託には委託者・受託者・受益者という主な登場人物がいます。

その中で受託者は最も重要な立場なのですが、

「受託者」がどんな役割を負うのか、知らずに引き受けられませんよね。


今回は、受託者の役割や義務の基本的なことについて

知識が全く無くても分かりやすいように、詳しく解説していきます。

この記事のポイントは3つです。

POINT!

・受託者は信託契約に従う。

 

・受託者は慎重に選ぼう。


・受託者が死亡した時の事を考えておこう


それでは以下で見ていきましょう。

 受託者とは?

まず、「受託者」とはなんでしょうか。

例として、一棟マンション経営をしているAさんと、息子さんのBさん(既婚)がいるとします。

Aさんは先日78歳の誕生日を迎え、高齢になってきたと感じたので

Aさん「もう隠居して、Bにマンションを引き継ごう」

と考えました。
そこで、Bさんと家族信託の契約をすることにしました。

この時、財産を託すAさんが委託者で、託されるBさんが受託者です。

突然受託者になることになったBさんは少し戸惑っています。

Bさん「じゅ、じゅたく者?一体何をすればいいの?なんか怖いんだけど!」

 受託者の役割

受託者は、信託財産を管理したり、処分したりします。

例えば、マンションを人に貸したり、大きな修繕を行ったりするのは「管理」にあたります。

マンションを売却してしまったり、借金をして抵当権を設定する行為は「処分」です。

Bさん「オーナーみたいなものかな。家賃収入は私のもの?」

受託者がマンションを人に貸すと家賃収入が入りますね。

それは「受益者」が受け取ります。法律上はどなたに設定しても構いませんが、贈与税課税がありますので、原則的に委託者がそのまま受益者となります。

Aさんを受益者にしておけば、Aさんの生活費に、必要であれば介護費等の必要な支出に使えます。

Aさん「受益者は私で、Bには月々報酬を与えることにする。受託者となって貰いながら、マンション管理のやり方を全部Bに教えよう」

 受託者は信託契約に従う

Bさん「よし、マンションを売却して株と外貨に替えて運用しよう!」

Aさん「おいおい!」

安心してください。受託者は信託財産を自由にできるわけではありません。

受託者は、あくまで信託の目的を達成するために、信託契約に書かれていることだけを行えます。

Bさん「そうか、信託契約書に「処分できる」と書いてなければマンションを売却できないのか」

Aさん「ほっ・・・」

 受託者の義務

また、受託者の義務は大きく3つあります。

善管注意義務
信託財産を守る義務のことです。人から任された財産なのだから、当然といえば当然です。自分の財産よりも非常に注意しなければ、何かあった時の「過失」が認められやすいです。

忠実義務
受託者は、あくまでも受益者のために仕事をしなければいけません。自分のためや、受益者以外の第三者のために管理処分をすることは絶対に出来ません。

分別管理義務
受託者は、自分の財産と信託財産を分けて管理しなくてはいけません。

Aさん「息子よ、きちんと義務を果たしてくれ」

Bさん「受託者となって、マンションのオーナーになる自覚がでてきたなあ」

 受託者になれない人・向いている人


さて、上記のような義務があるわけですから、受託者にはしっかりと財産を管理できる人になってもらわなければ困ります。

未成年者、成年被後見人及び被保佐人は、受託者になれません。

Aさん「じゃあ息子は受託者になれるな。少しリスクの高い資産運用に興味があるようだが」

Bさん「マンションを売って、、FXのレバレッジを(ぶつぶつ)」

受託者になれる方なら誰でもいいということではありません。

ご本人が信頼できる、どちらかと言えばご家族・ご親族の中の真面目で堅実な方がなられた方がいいでしょう。

ご友人でも構いませんが、是非とも慎重にお選びください。

 信託監督人をつけることもできる

Aさん「本当に息子(受託者)は私(受益者)のために働いてくれるのかな」

と、Aさんはどうしても不安になってしまいました。複雑なご事情のあるご家庭もあるでしょう。

そんな時は、受託者を監督してくれる「受託者監督人」として、専門職である弁護士や司法書士を選任できます。

Bさん「え、第三者に監督されるのは、なんだかなあ、、」

Aさん
Aさん

そこまで必要かは、【参考記事】を良く読んで考えよう

 受託者同士で監督し合ってもらってもいいが・・・

Aさん「う~ん、息子(受託者)は少し心配だけど、やっぱり第三者に介入まではされたくないな」

それでしたら、例えば、長男と長女の2人を受託者にしておいて、相互に監督し合ってもらうというのも一つの手ではあります。

ですが、あまりおすすめはできません。

この場合、受託者の仕事は2人が過半数ずつで決定することになります。

つまり、2人の仲が悪くなってしまったり、意見がまとまらなかったりすると、信託の事務が滞ってしまうかもしれないのです。

Aさん「妹のCと、Bは仲良かったよね」

Bさん「40年前とは事情が違うし、いちいち2人で決めるのは現実的とは思えないよ」

 受託者が死亡するとどうなるの?

Bさん「そういえば、信託中に万が一、私が死んでしまったらどうなるの?」

受託者が死亡した場合でも、信託は終了しません。

また、信託契約の中で、「受託者が死亡したら次の受託者は・・・」と次の受託者が指定されていれば受託者の地位が引き継がれます。

Aさん「よし、じゃあもしBが死んだら娘のCが次の受託者になるようにしよう。Bよりしっかりしてるしな」

Bさん「一言余計だよ。もしそれを書かなかったら、私が死んだとき、受託者の地位がウチの奥さんに相続されるの?ウチの奥さんがマンションの管理をできるかなあ」

受託者が死亡して、受託者に配偶者や子どもがいたとして、受託者の地位が相続されるなんてことはありません。

ご安心ください。

 受託者の相続人の義務

ですが、受託者の相続人(Bさんの奥さま)には2つ義務があります。

受託者の相続人の義務
①連絡のとれる受益者に受託者の死亡を伝える。
②新受託者が現れるまで信託財産を保管する(信託法第60条)。

新受託者は委託者と受益者が一緒に指定します。

委託者がいないのであれば、受益者のみで指定します(信託法第62条1項)(信託法第62条8項)。

Bさん「つまり、父(Aさん)に私が死んだことを知らせればいいんだな」

Aさん「それで、私が新しい受託者を選ぶ。それまでは息子(Bさん)の奥さんにマンションを保管しておいてもらうということか」

委託者(Aさん)の健康に当初から不安のある場合などは、予め信託契約の中で「受託者が居なくなったら受益者が受託者を指名する。」と決めておいてもいいですね。
※最後の手段として、裁判所に新受託者を選任してもらうこともできます(信託法第62条4項)。

 第二受託者を忘れずに

ちなみに、受託者が死亡してしまった時は、新受託者の選任を急いだ方がいいです。

新受託者も選任されない状態が1年間継続すると、信託が終了します(信託法第163条3号)。

そうならないために、多くの場合「第二受託者」を予め定めておく方がいいでしょう。

なお、第二受託者の候補が見当たらないのであれば、法人を設立して受託者にしておくこともできます。

そうすれば、「受託者の死亡」というリスクは避けることが出来ます。一方で、その法人の役員となる人物の確保は必要です。

 まとめ

いかがだったでしょうか。
受託者の役割、義務など、大まかにご理解頂けたかと思います。

Aさんは「隠居」と言っていましたが、昔の日本には「戸主制」というものがあり、「戸主が生前に家督を相続人へ譲ること」が民法で「隠居」と定められていました。日本国憲法の施行と同時に戸主制が廃止され、隠居の制度も廃止となったのです。

Aさんは、Bさんに不動産の管理の面倒な部分を引き継ぎ、収益はAさんが確保しつつ、Bさんにゆっくりと物件管理のノウハウを伝授できます。

家督ではなく、それまでの立場などを他人に譲り、悠々自適の生活を送ることや、第一線から退くことを「隠居」とするなら、家族信託は、ある意味現代の「隠居」制度とも言えるのかもしれません。

ご興味のある方は、まずは家族信託の専門家にご相談ください!

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