2021.06.23

家族信託は必要ないの?認知症で口座が凍結されても預金が引き出せるって本当!?


我が国の高齢化はますます進み、2025年には70歳以上が保有する金融資産が全体の4割に達すると言われています。

認知症患者の保有する金融資産の額は、将来的に200兆円を超えると試算されており、金融庁は2020年8月に銀行業界に対して顧客への対応の指針を作成するよう求めました。

それに伴い全国銀行協会は2021年2月18日、判断能力が低下している預金者本人に代わって、医療費など本人の利益が明らかな使途について親族が代わりに引き出せるとの考え方を示し、認知症患者が持つ預金の引き出しに関する指針を正式に発表しました。

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なぜ必要?親族による預金引き出しの制度

口座凍結とは?

この制度は、すでに判断能力が低下してしまった人やそのご家族にとってはとてもメリットのある制度です。

というのも、これまでは認知症等の発症により判断能力が低下している方が、銀行等に出向き、預金の引き出し定期預金の解約お振り込みの手続き等をしようとした際、金融機関側で本人の意思確認ができないと判断した場合には、トラブルの回避のため所謂『銀行口座の凍結』をします。そうなると、預金の引き出しや定期預金の解約、お振り込みの手続き等をすることができなくなります。たとえ、ご本人とご家族の方が同行して、事情を説明しても手続きをすることはできません。仮に、その使い道が治療費介護施設の入居費のように『本人のための支出』だとしても結果は変わらないのです。

どんなときに困る?

介護をしていくうえで、この問題に直面してしまうと、金銭面で重大な窮地を招くことになります。例えば、介護費用を捻出したくても、預金の引き出しやお振込ができません。また、自宅などの不動産を売却しようと考えても、判断能力が低下していると、同じ理由で売買契約ができないため不動産処分によって資金を作ることもできません。その場合、相続人の誰かが立て替えたとして、その金額を将来の相続時に相続財産から差し引こうと思っても、法律上当然に保証されるものではありません。

ですので、将来の『相続紛争回避』という視点からも、なるべく介護費用・医療費等は本人の財産から拠出することが望ましいのです。

預金引き出しのための成年後見利用のデメリット

上記のような『銀行口座の凍結』という問題に直面した場合に、「成年後見制度を利用すれば、預金の引き出しも定期預金の解約もできるので問題ない」という声を聞きます。銀行等の金融機関も基本的には成年後見制度の利用を勧めます。それに、成年後見制度の利用動機の第1位は圧倒的に“ 預金の管理・解約 ”が毎年多数を占めています。

参考:「成年後見制度の現状-厚生労働省」をもとに作成

しかし、これを簡単に考えると大変なことになってしまいます。

何故なら、成年後見は預金の引き出し“だけ”というような、スポット運用が認められておらず、本人が保有するすべての財産について『財産が自由にならない状態』が本人が亡くなるまで続くのです。

しかも、弁護士や社会福祉士などの専門職後見人が財産管理に関与し、後見人に対する報酬も本人が亡くなるまで発生し続けてしまいます。

これは、家族にとっては財産から後見人報酬が流出し続け、専門職の関与により、財産の主導権を手放すことを意味します。

このようなデメリットがあることから、成年後見制度は今日でも十分に機能していません。

東京大学教育学研究科・地域後見推進プロジェクトの調査によると、2020年現在において、成年後見制度利用している人は約23万人に過ぎず、潜在的な後見ニーズ(判断能力が不十分とみられる人の総数:推計およそ1000万人)のわずか2%です。

こうした背景から、銀行などの金融機関に対しては、より柔軟な対応を求める声がありました。2025年には、個人金融資産のうちの4割を70歳以上が保有し、国内総生産(GDP)の約4割にあたる200兆円以上の資産を認知症患者が保有するようになる、との予測もあるので、対策が急がれています。

そこで、認知症により判断能力が低下してしまったとしても、「家族が必要な書類を集めれば預金を引き出せるようにしよう」という要請が出された訳です。

結局、家族信託は必要ないの?

しかし、このような新しい制度ができても、高齢者の方の生前対策は十分とは言えません。

それは、以下のような理由からです。

使途が明確な引き出ししかできない

この新しい制度は、医療費や介護施設費など、本人の利益が明らかな使途である場合は、親族による預金の引き出しができるという制度ですので、普通に生活費や使途を限定しないで預金を使いたい場合にまで対応が予定されているものではありません。

あくまで、金融機関に対して「本人の利益が明らか」であることを証明できなければ、実現しないということです。

積極的な運用ができるわけではない

投資信託の解約に関して、「預金よりも慎重な対応が必要」としながらも、限定的に対応が可能としています。

しかしながら、贈与や不動産の購入、財産の投機的な運用については対象にならないでしょう。それは本人の利益が明確ではないからです。ですので、「税対策」や「資産運用」に預金を引き出して使うという事は、できない可能性が高いということです。

まだ、わからない部分も多く、手間もかかる

この制度は、まだまだ実務レベルでは定着していないなので、銀行等の窓口で「本当に使えるのか?」や「使える要件」等、まだまだ実際の利用場面では不明な部分も多いです。

金融庁の解釈でも『あくまで成年後見制度の利用を原則としている』ので、実際にあなたの取引銀行等で利用できるか?となると、未だ実現できる金融機関は極めて少なく、「現実的には難しい可能性が高い」と言わざるを得ません。

もし仮に実現したとしても、戸籍や請求書など、本人との関係性使途を明確にする書類を揃える必要があると考えられ、揃えるべき書類にも一定の厳格さが要求されるのではないかと予想され、手間も非常にかかるでしょう。

相続にかかわる民法改正も是非あわせてチェックしてみてください♪

認知症の対策としては不十分

今回の金融庁の要請は確かに、すでに認知症などで判断能力が低下してしまった人には、大変ありがたい制度です。

しかし、事前の準備が間に合うのであれば、家族信託や生前贈与など、よりメリットの大きい対策を検討しておいた方がいいでしょう。

理由として、この新しい制度では、医療費や介護費用など、緊急切迫した資金の拠出はできるかもしれません。しかし、認知症に対する備えは、それだけで十分とは言えないのです。「実家を売却して資金を捻出したい」という希望や、「孫への教育資金を贈与したい」、「資産の組み換えをして税負担を軽減したい」というような様々な想いの実現まではできませんし、預金の使い込み問題や、相続で揉めてしまう問題を回避することもできません。そういう場合に備えて、柔軟に財産の管理ができる『家族信託』や『生前贈与』を検討しておくことをおすすめします。

家族信託などと組み合わせて考える

家族信託は、財産を家族に信託する制度です。信託をされたご家族は受託者として信託された財産を、契約内容に従って管理・処分できます。

受託者が“ 本人のため ”に、契約で定めた財産管理の方法に従って管理・処分できる仕組みで、受託者のできる事の範囲を予め自由に決めておけるのが最大のメリットです。

契約の内容について家族でしっかり話し合っておけば、財産の使い込み相続で揉めてしまうことも避けられます。さらに、家族信託には『遺言代用機能』があり、遺言のように財産の承継先を事前に定めることができます。

生前の対策を考える場合には、『家族信託』と『預金の代理し引き出しの制度』は組み合わせて考えるべきでしょう。

家族に信託をしたい預金と、そうでない預金とを分けて考えて。

信託した預貯金は受託者に管理してもらい、そうでないほうの預金口座は、最悪の場合凍結してしまっても、この「親族による引き出しの制度」が実装されれば、緊急切迫の出金には対応できるかもしれません。

家族信託をした財産は受託者にしっかり管理してもらい、万が一意思能力が低下しても、家族で話し合って決めた目的のために使えるので、安心です。

なお、銀行や信託銀行の商品である「信託」にも家族信託と似たようなネーミングの商品がありますが、家族信託とは根本的に異なります。

これを『商事信託』と言い、家族信託とは明確に区別して考える必要があります。

詳細はこちらの記事をご参照ください。

まとめ

今回の「代理人による預金引き出し」の要請を受けて、対応を始めている大手銀行もあるようです。

そのような大手銀行の中には、認知症などにより判断能力が低下した人の取引を親族が代理できるようにするサービスを進めているとのことです。親族など代理人を事前に定めたうえで、医師による診断書を提出のうえ、代理で取引できるサービスです。

その他の銀行等もこれに続くことが考えられますが、我々リーガル・パートナーのインタビュー調査によると、まだまだ準備をすすめていない金融機関のほうが多いという印象でした。

また、「親族による引き出しの制度」が整備されれば、いざという時の出金には対応できるようになりそうですが、前述したようにそれだけで認知症に伴う財産凍結を始めとした、全ての問題が解決する訳ではありません。

これから数年以内に、200兆円以上の資産が凍結のリスクにさらされる社会になります。

「こんなはずじゃなかった」となる前に、家族信託について検討をしてみてください。

「家族信託に取り組んで後悔した」という声は、リーガル・パートナーのお客様の中からはまだ聞いたことがありません。



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