超低金利時代の昨今、金融資産の大半を預貯金で保有するのが必ずしも賢い選択とは言えなくなり、2015年以降[投資をしている人の割合]は年々増加しています。
しかしながら、ご存知でしょうか?上場株式等を保有している人が、ご高齢になり認知症などで判断能力が低下してしまうと、株価暴落の危機が明らかに迫っていたり、家族が現金を必要としていたとしても、任意のタイミングでは売却できなくなってしまう可能性があるのです!
そのようなことにならないように、預金や不動産だけでなく、上場株式も『家族信託』で管理するという方法があります。
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認知症等で判断能力を失ってしまった場合には、事実上も法律上も自分自身の判断で上場株式の管理・運用をすることが出来ません。
判断能力が衰える前に、株を売却して現金で保有しておけば、株を売買できずに困るということはなくなるかもしれませんが、そのタイミングは誰にも予測できませんし、預金口座の凍結リスクは残りますので何ら認知症対策にはなっていません。
しかも、それでは配当金や運用益などの金融商品特有のメリットがなくなってしまいます。
そして、株式を保有する高齢の方が、何らの準備もないまま判断能力が衰えてしまうと、上場株式の管理について成年後見制度を利用せざるをえないことになります。
成年後見制度が開始されると、上場株式の売却等は後見人の判断で行います。
しかし後見人は、本人の財産にとってマイナスなことはできないので、たとえ家族が現金を必要とし、株式の売却を急いでいたとしても、多額の含み損が発生する場合や株価動向によっては、タイムリーに売却してもらえない可能性が考えられます。
また、近年では成年後見制度支援信託という制度があります。
この制度は、そもそも当座で必要のない株や投資信託などについてすべて売却した上で、信託銀行に預けるよう裁判所から促される制度ですが、こういったケースも多くなっています。
では、そうならないための株式の認知症対策には、どんなものがあるでしょうか?
対策のひとつでよく知られるものとして、『代理人届の提出』があります。
証券会社に、ご家族の方を代理人として登録し、口座の管理や取引などを任せることができます。
しかし、この代理人の権限は、本人に代理の意思があることを前提としているものです。
代理人の届出後に本人の判断能力が低下すると、委任をするという本人の意思の裏付けがなくなりますから、取引の代理ができなくなる可能性があります。
証券会社や金融機関は、定期的に本人の意思確認が行えるような場面を用意しています。
ですので、代理人の届出をしただけでは、本人が認知症になってしまった時の対策にはなりません。
家族信託の信託財産には特に制限があるわけではなく、株式や投資信託といった金融商品を信託することが可能です。
この家族信託を使えば自分の判断能力が衰えてしまっても、ご家族が自分の代わりに上場株式や投資信託を管理・運用を続けることができます。
そして、信託した株式の管理・運用から生まれる配当などの利益はご本人自らが受け取れるように設計しますので、認知症対策として管理・運用だけを任せることが可能なのです。
その為には、管理に必要な「信託口口座」を開設する必要が出てくるのですが、以前は証券会社のほとんどが対応できていませんでした。
しかし、2019年頃から大手証券会社(野村證券、大和証券)を始め、2020年には楽天証券でも信託口口座を開設できるようになり、今後対応できる証券会社は増えていく見込みです。
上場株式を家族信託を活用して管理することには、次のようなメリットがあります。
本人が保有している有価証券を家族信託で管理することで、例え本人が認知症等により判断能力が低下してしまっても、受託者の手によって有価証券を換価処分することができ、医療費や介護費用等に充てることができます。
これを、成年後見制度を利用することなく(後見人、裁判所の関与がなく)実現できるところに大きなメリットがあります。
信託契約の中に有価証券に対する投資運用権限を与えれば、本人が認知症等により判断能力が低下してしまっても、受託者が有価証券を売却して得た利益や配当金、あらかじめ信託された金銭を、親の意向に基づき有価証券に投資・運用したりということもできます。
しかし、現状では「受託者は株式を売ることはできても、買うことはできない」という取り扱いの証券会社が多いので、その点には注意が必要です。
そんな認知症対策という意味では良いことばかりの家族信託ですが、注意しなければならないポイントがあります。
他の証券会社で保有している国内株式でも、受託者名義で開設した信託口口座に移管する(信託財産にする)ことはできるのですが、投資信託については、信託口口座を開設する証券会社が取り扱いをしている金融商品でなければ、移管することができません。
そのため、移管したい投資信託の取り扱いをしているかどうか、事前に証券会社に確認が必要です。
株主名簿には、これまでの委託者名義ではなく、新たに受託者名義で登録されるので、保有期間がリセットされ、上場株式の株主優待の保有期間などもリセットされます。
ただし、2020年以降株主優待制度を廃止する動きが広がっており、今後継続的に受けられる保証のない株主優待によるメリットを重んじるあまり、資産凍結リスクにさらされてしまっては元も子もありません!
信託口口座について、証券会社によっては特定口座の利用ができず、一般口座の開設が必要となる可能性があります。
その場合は、自ら確定申告をしなければならなくなるというデメリットがあります。また、NISAも利用できない可能性があります。
信託の受託者は、毎年の確定申告手続きの他に、有価証券の配当について「信託の計算書」の提出が必要となる場合があります。
証券会社で信託口口座を開設する手順は、おおまかには以下のとおりです。見ていきましょう。
上場株式や投資信託といった有価証券を家族信託する場合には、証券会社で受託者が信託財産を預かるための「信託口口座」を開設する必要があります。
まずは、ご自身の取引している証券会社がこの信託口口座の開設に対応できるかどうかの確認をすることが必要です。
家族信託を専門家に依頼している場合は、専門家の方で証券会社と打ち合わせを行います。
つぎに、家族信託契約書の内容を作っていきます。
家族信託をする場合の契約内容については、基本的には自由なのですが、証券会社や金融機関に提出する場合は、契約の様式や内容に一定の制限がかかる場合があります。
例えば、本来は公正証書ではなく私文書で作成しても有効に成立する家族信託契約ですが、証券会社との取引に利用する場合には、公正証書での作成を求められる場合がほとんどです。
また、家族信託契約の内容についても、別の記事で触れた「2代先、3代先の遺産の承継先」を指定できる「受益者連続型信託」は対象外とされていることが多かったり、「受託者は株式を売ることはできても、買うことはできない」という縛りがあったりということも多いです。
関連記事:もっとあなたの想いを叶える家族信託『受益者連続型信託』はこう使う!
しかし、東海東京証券など、最近では、相談しだいで『受託者連続型の信託』や『受託者の買い注文』にも対応できる可能性がある証券会社も登場してきました。
今後は、積極的な運用を受託者に委ねたいというケースでも家族信託の活躍が期待され、契約内容についての制限は緩和されていくことが予想されます。
公正証書の信託契約書が作成できたら、証券会社に口座開設の申し込みを行います。
この開設する口座を信託口口座とよび、家族信託の受託者の名義で管理するべき口座です。
信託口口座については、こちらの記事で解説しています。
関連記事:家族信託で親の預金を管理する方法とは? 信託口口座とは何か?
そして、無事に信託口口座が開設できたら、本人が所有している株式のうち信託財産としたいものを信託口口座に移管する手続きを行います。
そうすることで、以後は本人の状態に関わらず家族信託の受託者が株式の管理・運用をすることができるので、判断能力の低下に起因する様々な法的なデメリットに備えることができます。
株式について認知症対策をしないと、いざという時にタイムリーに売却できなくなる
株式の認知症対策には、家族信託が有効
取引のある証券会社が信託口口座に対応しているかは要確認
このように様々なご家族の需要に併せて、家族信託に関わる企業はサービスを拡大しており、今後ますます家族信託が有効活用できる場面は広がっていくことは間違いないでしょう。
一方で気をつけて頂きたいのは、家族信託の様々な機能をそれぞれのご家族に併せて設計するには、専門家による複合的な判断や経験が不可欠です。相続への対策は、遺言・後見・生前贈与・家族信託・保険活用など、様々な専門的な手法を組み合わせて行う、複雑なものだからです。
本記事のような株式の認知症対策をお考えの方は、ぜひ一度無料相談に起こしください。