ご存知でしょうか?上場株式を保有している人の判断能力が低下したら、
暴落の危機が明らかに迫っていたとしても、株式の売却ができなくなってしまいます。
そのようなことにならないように、預金や不動産だけでなく、上場株式も『家族信託』で管理するという方法があります。
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家族信託をしておけば、ご家族が本人の代わりに上場株式や投資信託を管理できるようになります。
その為には、管理に必要な「信託口口座」を開設する必要が出てくるのですが、証券会社のほとんどが対応できていませんでした。
しかし、2019年頃から大手証券会社(野村證券、大和証券)や、2020年には楽天証券でも信託口口座を開設できるようになりました。
自分の有価証券は自分で管理するから大丈夫
そうは言っても、何が起こるか分からないよ
実際のところは、どうなのでしょうか。もしも、有価証券を保有する本人が、病気や事故などにより判断能力が低下してしまうと大変です。対策はいくつかありますので、こちらでご紹介します。
目次
まだまだ元気だし、何もしなくてもいい!
本当にそうでしょうか?
繰り返しになりますが、認知症などにより判断能力が低下した場合、株式などの金融資産の売却も管理もできなくなってしまいます。
そうなってしまった場合、「成年後見制度」の利用がまず思い浮かぶかもしれません。多くの場合は、弁護士や司法書士などの専門職の後見人が就き、本人の生活費のために預貯金を引き出したりできるようになります。
ほら、もしもの時も安心だ
ところが、成年後見人には、株の取引が認められていないのです。
後見人は、あくまで「本人の財産を守るため」の働きしかできません。
最近では、「後見制度支援信託」といった、後見制度を利用しながら多額の金融資産の取り扱いを金融機関に信託する方法もありますが、そのようなサービスには信託財産の基準額の審査もあり、確実に使えるとは限りません。
成年後見は月々の後見人報酬も数万円かかるし、あまり積極的な利用は考えられないなあ
一旦判断能力が低下してしまうと、成年後見制度利用以外の選択肢が無くなってしまいます。ですので、何も対策をしないままというのはリスクが大きすぎます。では事前の対策として、どのような対策があるか見ていきましょう。
対策のひとつに、『代理人届の提出』があります。証券会社に、もしもの時は家族が代理人になる旨を届け出ておくのです。代理人に、現物取引などを委任して行ってもらえます。
しかし、もしも委任後に本人の判断能力が低下すると、委任をするという本人の意思が確認できませんから、代理人としての取引ができなくなる可能性があります。証券会社や金融機関は、定期的に本人の意思確認を行うので、本人が認知症になってしまった時の対策にはなっていないと言えます。
それじゃあ、資産凍結の対策とは言えないな
本人の口座から受託者名義の信託口口座に上場株式などの管理を移し、受託者は信託契約で定められた目的に従って、その有価証券の管理や取引を行うことができます。
本人が認知症等になった後も信託口口座は凍結しないので、受託者が管理や取引を継続することができます。また、家族信託では本人が亡くなった後の信託財産を承継する人を定めることができるので、遺言のような機能(遺言代用型家族信託)もあり、相続手続きもスムーズに行うことができます。
これなら資産凍結の対策になる
上場株式につき、家族信託を使って、受託者が管理することには以下のようなメリットがあります。
本人が保有している有価証券を家族信託で管理することで、例え本人が認知症等により判断能力が低下してしまっても、受託者の手によって有価証券を換価処分することができ、医療費や介護費用等に充てることができます。これを、成年後見制度を利用することなく実現できるところに大きなメリットがあります。
信託契約の中に有価証券に対する投資運用権限を与えれば、本人が認知症等により判断能力が低下してしまっても、受託者が有価証券を売却して得た利益や配当金、あらかじめ信託された金銭を、親の意向に基づき有価証券に投資・運用したりということもできます。
しかし、現状では「受託者は株式を売ることはできても、買うことはできない」という取り扱いの証券会社が多いので、注意が必要です。
一方で、以下のようなデメリットもあるので注意が必要です。
他の証券会社で保有している国内株式でも信託口口座に移管する(信託財産にする)ことはできるのですが、投資信託については、信託口口座を開設する証券会社が取り扱いをしている金融商品でなければ、移管することができません。そのため、移管したい投資信託の取り扱いをしているかどうか、事前に証券会社に確認が必要です。
株主名簿には、これまでの委託者名義ではなく、新たに受託者名義で登録されるので、保有期間がリセットされます。そのため、上場株式の株主優待の保有期間などもリセットされます。
ただし、2020年以降株主優待制度を廃止する動きが広がっており、今後継続的に受けられる保証のない株主優待によるメリットを重んじるあまり、資産凍結リスクにさらされてしまっては元も子もありませんので、比較検討の余地があります。
信託口口座について、証券会社によっては特定口座の利用ができず、一般口座の開設が必要となる可能性があります。その場合は、自ら確定申告をしなければならなくなるというデメリットがあります。また、NISAも利用できない可能性があります。
信託の受託者は、毎年の確定申告手続きの他に、有価証券の配当について「信託の計算書」の提出が必要となる場合があります。
上場株式や投資信託といった有価証券の管理には、証券会社で信託口口座を開設する必要があります。ただし、証券会社ならどこでも開設できるわけではありません。
信託口口座は、野村證券や大和証券、楽天証券などで開設することができますが、信託契約の内容に制限がかかる場合もあります。
信託口口座開設のための条件として、別の記事でも触れた「2代先、3代先の遺産の承継先」を指定できる「受益者連続型信託」は対象外とされていることがほとんどですし、「受託者は株式を売ることはできても、買うことはできない」という縛りがあったりということも多いです。
しかし、東海東京証券など、最近では、相談しだいで『受託者連続型の信託』や『受託者の買い注文』にも対応できる可能性がある証券会社も登場してきました。
今後は、積極的な運用を受託者に委ねたいというケースでも家族信託の活躍が期待されます。
このように様々なご家族の需要に併せて、家族信託に関わる企業はサービスを拡大しており、今後ますます家族信託が有効活用できる場面は広がっていくことは間違いないでしょう。
一方で気をつけて頂きたいのは、家族信託の様々な機能をそれぞれのご家族に併せて設計するには、専門家による複合的な判断や経験が不可欠です。相続への対策は、遺言・後見・生前贈与・家族信託・保険活用など、様々な専門的な手法を組み合わせて行う、複雑なものだからです。
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