「ハンコを押す為に出社した」
コロナの影響により急速にリモート化が進む中、数人が出社し、実はハンコを押す作業などのためだけに出社している、なんていう現象が報道されました。
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ハンコがもたらす弊害が浮彫になり、日本の慣習に対する議論が巻き起こった。
「ハンコ不要論」なるものが囁かれるのも、当然の流れともいえますね。
一方で、行政手続き、法務手続きではハンコが必要な場面は多くみられます。例えば、「遺言書」にもハンコは欠かせません。
遺言書の書き方は「遺言者が、全文・日付・指名を自著して、これに印を押す」である(民法968条)。もしも書きなおしが発生すれば、その部分にも印を押さなければなりません。
印を押さなければ、遺言は無効となってしまいます。
これは、過去の判例(最高裁判所平成元年2月16日判決)で、印を押す行為は、遺言者が誰であり、遺言者が遺言を作成する「意思」をもっていたことを表し、そして重要な文書には作成者の署名の近くに押印をして完結させる我が国にの慣行ないし法意識によるからだとされています。
しかし、上記でご紹介した、「全文を自署する」という自筆証書遺言の要件も法改正によって緩和され、「財産目録」に限っては自署でなくてもよいとされました。
同改正には、遺言を普及させて、相続のトラブルを減らす目的があります。
菅政権は行政のデジタル化を進めており、以前から“ハンコの無駄”を訴えていた河野太郎行政改革大臣は、各省庁に「ハンコの原則使用禁止」を求め、できない場合は9月中に理由を示すよう指示しました。
とはいえ、ハンコの代わりはあるのでしょうか。そこで、注目されるのが「電子印鑑」です。
ウェブ上で契約書が締結ができるサービスがあるのです。
これまで、例えば持ち回りで契約する場合などは、契約書を印刷して契約相手に郵送し、ハンコを押してもらった後、さらに返送してもらわなくてはいけませんでした。
一方、電子契約書であればメールのやり取りで済み、お互いのメールアドレスが印鑑の代わりを果たしてくれるのだそうです。
今後、ますますこうした「ペーパーレス」「脱ハンコ」の動きが加速すると予想されます。
弊所で多数のご相談を承っている「家族信託」も、信託契約書を公正証書にする際に、署名・押印をして、印鑑証明書の添付が必要になります。
その他、不動産登記・商業登記でも、「押印と印鑑証明書の添付」はセットで付きまといます。
「脱ハンコ」が実現すれば、手続きの手間が一つなくなり、より円滑な信託契約・不動産・商業登記が可能になるのではないかと期待しています。