2023.05.16

おひとり様必見!ソロ終活でも遺言書があれば安心な理由とは?

近年の親子関係の希薄化、熟年離婚、生涯未婚率の上昇など、様々な原因が絡まりあい、高齢(65歳以上)の単身世帯の方が増加しています。

配偶者やお子様がいない方の生前対策には、特有の気を付けなければならない点があります。

引用:令和3年度版厚生労働白書

特に、遺言の作成と遺言執行者の指定は必須であると申し上げてよいでしょう。

この記事では、おひとり様が遺言を書くべき理由について解説します。

お読みいただくことで、すべきことが明確になりますので是非最後までお読みください。

おひとり様の相続人は誰?

まずは基本的な事項から確認しましょう。配偶者も子供もいないおひとり様が亡くなった場合、相続関係がどうなるのかを見ていきます。

法定相続人

民法では、以下の通り法定相続人という立場の人が決められています。法律上、相続人となる可能性のあるのは、以下の通りです。

①配偶者

②子供(孫)

③両親(祖父母)

④兄弟姉妹(甥姪)

①配偶者は、本人の相続発生時に法律上結婚している相手がいるのであれば、必ず相続人となります。夫婦関係が破綻していても、法律上結婚しているのであれば相続人となる点はポイントです。②~④については、②子供(孫)→③両親(祖父母)→④兄弟姉妹(甥姪)の順番で、相続発生時に存在している人が相続人となります。例えば、配偶者と子供がいる人が亡くなった場合、配偶者と子供が相続人となります。また、配偶者はいるが子供はおらず、両親が存命の人が亡くなった場合には配偶者と両親が相続人となるといった具合です。

おひとり様の法定相続人

以上を踏まえて、配偶者や子供がいない人で、かつ両親も他界しているケースでおひとり様が亡くなった場合、兄弟姉妹(甥姪)がいるかどうかで、相続人が以下のような形となります。

 ●兄弟姉妹(甥姪)がいて生存している場合    → 兄弟姉妹(甥姪)が相続人

 ●兄弟姉妹(甥姪)がいたが全員他界している場合 → 相続人はいない

 ●兄弟姉妹(甥姪)がそもそもいない場合     → 相続人はいない 

兄弟姉妹(甥姪)がいればその人が相続人となりますが、いない場合は「相続人がいない」という事態となります。もしも亡くなった方が、不動産や預貯金・金融資産などの資産を持っていたらどうなるのかご存じですか?実は、若干の手続きを経る期間はあるものの、最終的には国に財産が帰属することとなります。

特別縁故者とは

おひとり様で、兄弟姉妹(甥姪)が一切いない方が亡くなった場合は、財産を受け取る相続人が全くいないということとなります。そのような場合、まずは「特別縁故者(とくべつえんこしゃ)」という人を探す事になり、もし特別縁故者が存在するのであれば、その人が相続財産を取得します。特別縁故者とは、亡くなった方と特別な関係があった人の事で、具体的には、以下のような人が該当します(民法第958条の3)。

 ①被相続人と生計を同じくしていた者

 ②被相続人の療養看護に努めた者

 ③その他被相続人と特別の縁故があった者

①の代表例は、内縁の配偶者でしょう。

同居して家計が同じであれば特別に相続できるかもしれません。②については、「療養看護」がどの範囲で認められるか不透明な部分がありますが、やはり内縁の配偶者や血縁関係はない遠い親戚などがその人の介護・看護などを長期間継続したのであれば財産を相続する可能性があります。

③については、上記以外をカバーする目的の条項なので一旦無視してよいと思います。

これらの特別縁故者がいる場合は、家庭裁判所にて一定の手続を定められた期間に申し立てを行う必要がありますので注意してください。

最後は国に財産が帰属してしまう

おひとり様が亡くなり、兄弟姉妹(甥姪)がおらず特別縁故者もいないという事になった場合、財産はどうなるのでしょうか?

結論、財産は裁判所の手続を経て最終的には国に帰属します

もちろん、国に帰属させるためにはいくつかのプロセスと期間が必要ですが、相続人も特別縁故者もいない場合、例外なく最後は国に財産が帰属することとなります。

ここで考えていただきたいことがあります。皆様がもし、相続人がいらっしゃらない方だとしたら、ご自分の財産は国に渡したいですか?それとも、ご自分の意思で社会的に有益な活動をしている団体や個人に寄付等を行い、社会の役に立てていきたいですか?

し後者であれば、遺言を必ず作成しましょう。なぜなら、遺言を作成しないまま亡くなってしまったら、国が財産を受け取ってしまうからです。もちろん、国が取得した後に、何か有益な事に財産が使われるのだとは思いますが、どのように使われるかは少し見えづらいですよね。そんな時は、遺言を書くことをおすすめします。

遺言書でできること

ここまで見ていただいた通り、おひとり様で国に財産を渡すことに違和感を感じる方や、場合によっては兄弟姉妹(甥姪)に相続されるのに違和感を感じる方は、必ず遺言を書くべきなのです。ここで改めて、遺言で何ができるのかを簡単に確認しておきましょう。 

遺言で可能なこととは?

 

遺言では、主に以下のような事を決めることができます。

●自分の財産の承継について

自分の財産を、「誰に」「何を」「どれくらい」承継してほしいかを自由に決めることができます。また、おひとり様で配偶者も親も子供もいないのであれば、「遺留分」という「主張をすれば必ずお金でもらえる権利」もありません。よって、おひとり様は自由にご自分の財産の相続先を決めることができると言えるでしょう。例えば、兄弟姉妹(甥姪)に相続してほしくない方や、国に渡したくない人は必ず遺言を書くとよいでしょう。

●身分について

推定相続人を相続人でなくすような「廃除」という手続きや、婚外子の認知、未成年後見人の指定など、家族・身分に関する事を遺言に書くことで法的な効力を持たせることができます。

●遺言執行者の指定

遺言を書いても、その遺言の内容を実現するための具体的な活動をする人がいなくては意味がありません。例えば、「私には家族がいないので、財産のすべてを田中さんに遺贈する」という遺言を書いたとしても、不動産の登記や預金の解約と振り込みなどをする人がいないと進まないですよね。遺言執行者とは、このような「遺言の内容を実現するために必要な手続き」を行う権限を持った人のことです。

 

シンプルに考えると、「財産の承継について」「家族・身分について」「誰が事務を遂行するか」という三点を考えていただければ良いと思います。また、「家族・身分について」は検討しなくても良い方が多いと思いますので、実際は「財産の承継について」と「誰が事務を遂行するか」の二点だけを抑えれば良いでしょう。とっても簡単ですね。

関連記事:遺言を書きたい方必見!簡単に書ける自筆証書遺言の書き方を解説

おひとり様と遺留分

さて、上記の解説の中で、「遺留分」というお話をしました。「遺留分」とは何かという点とおひとり様との関連性について少しだけ補足します。

まず、「遺留分」とはなにか?「遺留分」とは、「配偶者・子供・親」が相続人である場合、どのような「主張すれば必ず受け取ることができるお金」の事です。

受け取ることができるのは、「法定相続分の半分」と決まっています。例えば、配偶者はおらず、子供が2人の人が亡くなったとします。

法定相続分は2分の1づつとなります。しかし、亡くなった人は遺言を書いていて、片方の子供に全ての財産を相続させるという内容でありました。このようなケースで、財産をもらえなかった子供は、「遺留分」を主張することができます。

「相続財産の4分の1(法定相続分の半分)相当を、お金で私に払ってくれ」と主張することができるというわけです。

通常、相続対策の場面では必ずこの遺留分を確認し、慎重に財産の配分を決めていくことが多いです。しかし、配偶者も子供も親もいないおひとり様の場合、遺留分のことは一切気にしなくて良くなります。なぜなら、遺留分というのは「配偶者・子供・親」が相続人となる場合にのみ発生するものであり、兄弟姉妹が相続人の場合には発生しないからです。

以上みてきた通り、おひとり様で配偶者・子供・親のいずれもいらっしゃらない方の相続人には、遺留分はありません。よって、遺言でご自身の財産の行先を決めてしまえば、何らの紛争の可能性も無く財産の承継を実現することができます。

遺言執行者がいないと無意味になる

遺言を書いたとしても、その内容を実現する人がいなければまったく意味がありません。特におひとり様の場合、遺言書があったとしてもそもそも誰も探してくれる人がいない可能性が高いです。誰にも遺言が発見されなければ、遺言の存在が知られずに国に財産が帰属してしまう可能性があります。ここで重要になるのが、おひとり様が遺言を書く場合は、「遺言執行者」という人を必ず指定しておくことです。

遺言執行者とは

遺言執行者とは、「遺言の内容を実現するための権限を持った存在」です。例えば財産の管理や処分、名義の書き換えや銀行口座の解約など、様々な活動を遺言執行者が単独で行うことができます。士業や銀行などが関わる遺言書の場合は、多くのケースで遺言執行者が設定されているものです。

なお、遺言執行者は家族や友人、法人でもなることができるため、お願いしたい個人や会社に自由に依頼することができます。

遺言執行者がいることで何がうれしいか

おひとり様の相続の場合、遺言執行者がいることで以下のようなメリットがあるでしょう。

遺言書の存在が必ず明らかになる

遺言執行者を決めておき、介護施設や病院などに死亡時の連絡先として伝えることで、亡くなった際に必ず遺言書の存在が明らかになるようにできます。結果、先に述べたような「遺言の存在が無視されて国に財産が帰属してしまう」ということを防ぐことができるでしょう

手続が円滑に進む

遺言執行者は、遺言の内容を実現するために一人で様々な手続きを実行できます。よって、財産の特定や寄付行為なども迅速に、確実に進むでしょう。特に士業や銀行などの遺言執行者に依頼することで確実な手続きが期待できます。

関連記事:遺言の効果を最大に!遺言執行者のメリットと活用方法

まとめ

さて、いかがだったでしょうか?以上みてきた通り、お子様がいないおひとり様は、積極的に遺言を書くことを検討なさってください。

国に財産をお渡しするよりも、ご自分の意思で財産を社会の役に立てたり、お世話になった人にお渡しすることが可能になります。

また、もし遺言を作成する際には遺言執行者を忘れずに設定しましょう。設定することで、確実に遺言の内容の実現がされると思います。

リーガル・コンサルティング&パートナーでは、遺言書の内容に関するコンサルティングはもちろん遺言執行者の業務もご相談いただけます。

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