「相続での家族の負担を減らして、安心させてあげたい」
「相続争いの火種をなくしておきたい」
そのように考えて、これから遺言書を作成しようと考えている方は、遺言執行者の役割やその活用方法について、是非知っておいていただきたいと思います。
遺言は、自分の意思や想いを家族に伝える大切な文書です。しかし、遺言の効力を最大限引き出すためには、遺言執行者の指定が欠かせません。
何故なら、遺言書で遺言執行者を指定しておくことで、遺言書の相続人の負担を減らしたり、争いの火種を作らないという効果を最大化することができるからです。
この記事では、遺言執行者の役割や権限、どのようなケースで遺言執行者が役立つのかを解説していきます。
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目次
遺言執行者の役割は、簡単に言えば「遺言書に書かれた内容を実現する」ことです。
遺言書で財産の配分を決めたり、想いを記載することで相続人の負担を減らしたり、争いの火種をなくせることは間違いないのですが、やはり遺言者亡き後、手続きをする段になると「納得がいかない」「積極的に手続きに協力したくない」などの相続人がいて、思い通りに手続きが進まないことがあります。
また、相続に関わる家族の手続きは、たとえ遺言書を作成してあったとしても、なかなかに重い手続き負担があります。
それぞれの手続きにある程度の知識が必要なことと、手続きの相手は金融機関や公的機関が多いので、平日動かなければならなくなり、働いている人にとっては大変な負担です。
それらを単独で執行する権限を持つのが遺言執行者です。
遺言で、「遺言執行者」を指定することで、殆どの手続で相続人全員の関与が不要となります。
相続人の関与が不要になることで、積極的な協力を得る必要がなくなり、多少不満のある相続人がいたとしても手続きがストップしてしまうということがありません。
また、遺言執行者に専門的な第三者を指定することで、相続人の納得感を得るという活用の仕方もあります。
参考記事:最速で遺言を書きたい方必見!簡単に書ける自筆証書遺言のメリットと書き方を解説
続いては、遺言執行者にはどのような権限があり、何をしなければならないかを解説します。
2019年の民法改正で、「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する(改正民法第1012条)」と改正され、遺言執行者の立場や、権限も明確化されました。遺言執行者は遺言の内容を実現するために、単独で次のような権限をもっています。
この他、遺言書に記載があれば不動産の処分権限をもつこともあります。
遺言書に従い不動産を売却し、その売買代金を相続人に分配することも可能です。
このように、遺言執行者には広範な権限が与えられているので、遺言執行者を決めておくことで、遺言の内容がスムーズに実現されることを担保してくれます。
遺言書を書いた本人としては、「遺言書を書いたのはいいが、妻もいい歳だ。広範な手続を家族みんなで協力してちゃんとできるだろうか?」と、心配な方も多いと思いますので、そのような方に非常におすすめです。
具体的に遺言執行者は次のような業務を担当します。
遺言執行者は相続が開始したら、戸籍等を取得し相続人の調査・確認作業を行います。
相続人が把握していない子がいたりすれば、その子も相続人になるため戸籍等の公的な書類で確認する必要があるのです。
相続人を確認したら、自分が遺言執行者に就任したことや、遺言書の内容を相続人の全員に通知をします。
遺言書に財産目録が記載されていない場合は、ここが一番大変かもしれません。
不動産、預貯金、有価証券、借金の残高などを全部調査して、財産目録を作成する必要があります。
そして、すべての財産を遺言の内容に従って相続人に分配します。
不動産であれば法務局での登記申請(不動産の名義変更)、預貯金であれば各金融機関の解約と払い戻し手続き、株式などの有価証券であれば証券会社の名義変更手続き、その他売却などの換価手続きすべてを行います。
では、どんな人を遺言執行者に指定できるのでしょうか?
遺言執行者には原則として、誰でもなることができます。
よって、遺言で誰を指定しても構いません。
もちろん、遺言によって一番利益を受けるような人を指定することもできます。
相続人以外の親族や、信頼できる友達を指定するということもあります。
ただし、それなりの仕事量を処理する知識と能力を必要としますので、信頼ができて、かつ仕事がきっちりできる人を選ぶ必要があります。
ですので、弁護士や司法書士などの専門職を指定することも非常におすすめです。
かなり高額にはなってしまいますが、信託銀行の遺言信託を利用するという方法もあります。
ただし、未成年や破産した人は遺言執行者にはなれません。
これらの人は、法律上資産の管理を適切にできないと考えられているからです。
続いて、遺言執行者を指定することにはどんなメリットやデメリットがあるのかを解説します。
先ほど解説したとおり、遺言書があっても感情的に相続人全員が協力的だとは限りません。
また、金融機関などの機関は、たとえ遺言書があっても相続人全員の関与を要求していることがあります。
その点、遺言執行者は法律上あらゆる事務を単独で遂行できる権限があるので、遺言書の内容を確実に実現できます。
遺産相続においては、遺言があったとしても相続人間でのトラブルが発生することがあります。
もちろん、遺言執行者は単独で遺言の内容を実現できるので、トラブルによって手続きがとまってしまうということはありませんが、相続をきっかけに起きた感情の衝突というものは根が深く、仲の良かった兄弟が生涯分かり合うことがなくなってしまうこともあるほどです。
そのようなおそれがある場合、遺言執行者は誰を指定しても良いので、例えば専門家のような中立的な立場の者が入ることで、不公平感や不満を調整する効果が期待できます。
遺言執行者を指定すること自体にデメリットはありません。
ただし、以下のことには注意が必要です。
遺言で遺言執行者を指定しても、指定された人は就任を拒むことができます。
その場合は、遺言執行者がいない場合と同様に相続人全員の関与のもと遺言の内容を実現していくことになります。
ですので、遺言で遺言執行者を指定する際には、事前に遺言執行者となる人の了解を得ておくことが無難です。
遺言執行者に就任した人が、ちゃんと役割を果たしてくれない、なかなか手続きを進めてくれないような人だと厄介です。
この場合は、家庭裁判所の関与のもと遺言執行者を解任する手続きをとらなければなりませんので、良かれと思って遺言執行者を指定したのに、かえって面倒なことになってしまいます。
このような面でも、信頼できる専門家を遺言執行者に指定することには一定のメリットがあるといえます。
遺言執行者を指定すること自体にデメリットがないので、適任者がいるのであれば指定したほうが良いでしょう。ここからは、特に積極的に遺言執行者の選任をしたほうがいい場合をケース別にご紹介します。
相続人の中に不仲な人がいたり、未成年のように立場の弱い人がいたりする場合、全員の利益を守りながら遺言の内容を実現していくためにも、遺言執行者という立場が有効です。
また、遺産の遺産の大きさに偏りがある場合は、多少なりとも不満を感じる相続人がいる可能性が高いので、やはり遺言執行者の立場が有効です。
遺産の中に、不動産や預貯金、有価証券や事業など、様々な資産が含まれる場合には、法的手続きや税務などが煩雑になることが予想されます。
また、相続人の中に高齢の方がいる場合も多いので、手続き負担はなるべく少ないことが望ましいと思います。
そのような場合には、相続人が自分たちで調査や判断をしながら進めるよりも、手続きを専門家に依頼することが有効ですが、そのような判断が遺言執行者に一任されていることで、手続きがスムーズに進むので、負担や感情的な摩擦が生じにくくなります。
相続人ではない人に財産を渡したり、特定の団体に寄付をした場合に遺言執行者がいると手続きがスムーズに進みます。
遺言執行者がいない場合、遺贈などは相続人全員の協力で行わなければならないからです。
近年、生涯未婚率は増え、出生率も減り続けており、いわゆる「おひとりさま生活」も一般的なものになってきました。
相続人がいない方がなくなると、その財産は国庫に帰属します。
最高裁判所の調べによると、2021年度は国庫に入った相続財産額が過去最高の約647億円で、10年前の2倍だとのことです。
一方で、せっかく築いた財産なのだから、国庫に帰属させるのではなく、「遺贈でお世話になった人に財産を渡したい」、「思い入れのある公共団体や慈善団体に寄付をしたい。」
そのように考える方も増えてきています。
そのような場合には、遺言はもちろんのこと、その内容を実現する遺言執行者の存在が必要です。
ただし、このような場合は少し遺言の内容が専門的になるので、専門家の関与が必須になるものと思われます。
相続人の「廃除」といって、自分に対して著しく不利益を与えたものの相続権を剥奪する制度があります。
この廃除の手続きは生前に家庭裁判所に申し立てることもできますが、遺言書で指定することもできます。
その場合は、廃除の手続きを遺言執行者が担当しなければならないので、遺言執行者の指定が必要です。
遺言執行者の選任方法には以下の3つの方法があります。
・遺言で指定する
・遺言執行者を誰かに決めてもらう
・家庭裁判所に選任を申し立てる
ただし殆どの場合、遺言執行者は遺言で指定します。
例外的に、遺言執行者が必要なケースであるにも関わらず【遺言執行者が就任を拒否した】【遺言執行者が業務を遂行しない、もしくはできない】要な場合に家庭裁判所に選任を申し立てることがあります。
さて、ここまではいかがでしたでしょうか?
遺言執行者を選任すると
・遺言の内容が確実に実現できる
・手続きの負担が大幅に減る
・相続人同士のトラブルを防止する効果がある
ことがおわかりいただけたと思います。
また、遺言には何を書くべきか?自分の相続には遺言執行者がいたほうがいいのか?誰を遺言執行者にするべきなのか?
このようなことにお悩みの場合は、専門家の活用を積極的に検討してみてください。
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それでは、また別の記事でお会いしましょう。最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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