おはようございます!
すっかり秋めいてきましたね。
昨日はさんまの塩焼きを食べました。
旬の食材は、やっぱりいいですね!
さて、われわれ法律系の業界で旬なものといえば、
「家族信託」です。
昨日の日本経済新聞朝刊にも、
「認知症とお金(3)父の家を売れなくなる」
というタイトルで認知症と成年後見、家族信託について掲載されていました。
この記事について、少し考えてみたいと思います。
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「父の家を売れなくなる」
タイトルとして目を引くので、
あえてこのような表現の仕方をしているのだとは
思いますが、正確ではない表現です。
正確には、
「合理的な理由があれば父の家を売ることができるが、
認知症になってからの売却は成年後見制度を利用せざるを得ず、
場合によっては売れない可能性がある。」
だと思います。
…。 長い! ですね。
成年後見などの法制度になじみのない方に対しての説明は、
可能な限り短く・わかりやすくしなければならないですが
誤解を招くような表現は慎むべきであると考えます。
なぜならお客様には、可能な限り正確・十分な情報をお伝えし、
そのうえでどのような対策を実行するのかを、共に考える。
われわれは、こんなスタンスで取り組むべきと考えるからです。
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さて、本題に戻り、
父が認知症になってしまった場合、家が売れないのか?
答えは、
「合理的な理由があれば、成年後見を利用したうえで、売れる。」
です。
財産をお持ちの方が認知症などになってしまった場合、
法律上、契約の内容を判断する能力が無くなってしまったと考え、
その方のした行為(例えば売買や贈与)は「無効」とします。
ある方が認知症などになったのをいいことに、
誰かが騙そうとしている場面を思い浮かべてください。
認知症などの方が自由に契約をすることができたら、
財産を奪われて大変なことになりそうですよね。
そんな認知症などの方のために用意されているのが、
成年後見制度(ここでは、事後の対応である「法定後見」をさすものとします)です。
家庭裁判所に親族などが申し立てをし、認知症などの方の
財産管理と身上監護(生活環境を整える)をする成年後見人を選びます。
制度の目的は、
「本人の生活と財産を守る」
こと。
成年後見人がその方の資産などを管理して、
「守る」ことが目的です。
裏を返せば生活・財産状況に特段の問題がなければ、
現状維持をするということです。
なぜなら、ご本人がどのような希望を持ってらっしゃるか
(自宅を売ってもいいのか?孫に贈与をしたいのか? など)
認知症が進んでしまった後に、正確に判断するのが困難だからです。
(認知症の方が、昨日と今日で言うことが違うことはよくありますよね)
例えば現金が十分にあって、この先20年間の生活費(施設利用料・医療費など)が
問題なく支払える状況で、成年後見を利用している90歳のおじいさんがいたとします。
このおじいさんが、自宅を売却したいと思った場合に、果たして可能でしょうか?
おそらく、家庭裁判所から「売却の必要はない」と判断されるでしょう。
自宅は、本人にとっての心のよりどころになっていることも多く、
「最後は自宅の畳の上で死にたい」と考えている人だっていらっしゃいます。
よって、「生活費が足りない」「火事で全焼した」といった
合理的な事情がなければ、売却することは本人の生活・財産を守ることにはつながらない。
このように家庭裁判所は考えるからです。
これが、「父の家が売れない」の正体です。
逆に、成年後見を利用した場合であっても、
「合理的な理由」があれば売却は可能だということです。
過度に心配をすることはありませんが、成年後見制度を利用することで、
一定の負担も発生しますので、総合的に考慮し、家族信託を使って対策をするか、
成年後見を利用するかをご判断ください!
↓ 成年後見を利用した場合の費用や問題については、こちら ↓
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本日も最後までお読みいただきありがとうございました!