2018.10.18

認知症になってしまったら、「家が売れなくなる」というのは本当か?

おはようございます!

すっかり秋めいてきましたね。

昨日はさんまの塩焼きを食べました。

旬の食材は、やっぱりいいですね!

 

さて、われわれ法律系の業界で旬なものといえば、

「家族信託」です。

昨日の日本経済新聞朝刊にも、

 

「認知症とお金(3)父の家を売れなくなる」

 

というタイトルで認知症と成年後見、家族信託について掲載されていました。

この記事について、少し考えてみたいと思います。

 

============================

 

「父の家を売れなくなる」

 

タイトルとして目を引くので、

あえてこのような表現の仕方をしているのだとは

思いますが、正確ではない表現です。

正確には、

 

「合理的な理由があれば父の家を売ることができるが、

 認知症になってからの売却は成年後見制度を利用せざるを得ず、

 場合によっては売れない可能性がある。」

 

だと思います。

 

…。 長い! ですね。

 

成年後見などの法制度になじみのない方に対しての説明は、

可能な限り短く・わかりやすくしなければならないですが

誤解を招くような表現は慎むべきであると考えます。

 

なぜならお客様には、可能な限り正確・十分な情報をお伝えし、

そのうえでどのような対策を実行するのかを、共に考える。

われわれは、こんなスタンスで取り組むべきと考えるからです。

 

============================

 

さて、本題に戻り、

父が認知症になってしまった場合、家が売れないのか?

答えは、

 

「合理的な理由があれば、成年後見を利用したうえで、売れる。」

 

です。

 

財産をお持ちの方が認知症などになってしまった場合、

法律上、契約の内容を判断する能力が無くなってしまったと考え、

その方のした行為(例えば売買や贈与)は「無効」とします。

ある方が認知症などになったのをいいことに、

誰かが騙そうとしている場面を思い浮かべてください。

認知症などの方が自由に契約をすることができたら、

財産を奪われて大変なことになりそうですよね。

 

そんな認知症などの方のために用意されているのが、

成年後見制度(ここでは、事後の対応である「法定後見」をさすものとします)です。

家庭裁判所に親族などが申し立てをし、認知症などの方の

財産管理と身上監護(生活環境を整える)をする成年後見人を選びます。

制度の目的は、

 

「本人の生活と財産を守る」

 

こと。

成年後見人がその方の資産などを管理して、

「守る」ことが目的です。

裏を返せば生活・財産状況に特段の問題がなければ、

現状維持をするということです。

なぜなら、ご本人がどのような希望を持ってらっしゃるか

(自宅を売ってもいいのか?孫に贈与をしたいのか? など)

認知症が進んでしまった後に、正確に判断するのが困難だからです。

(認知症の方が、昨日と今日で言うことが違うことはよくありますよね)

 

例えば現金が十分にあって、この先20年間の生活費(施設利用料・医療費など)が

問題なく支払える状況で、成年後見を利用している90歳のおじいさんがいたとします。

このおじいさんが、自宅を売却したいと思った場合に、果たして可能でしょうか?

おそらく、家庭裁判所から「売却の必要はない」と判断されるでしょう。

自宅は、本人にとっての心のよりどころになっていることも多く、

「最後は自宅の畳の上で死にたい」と考えている人だっていらっしゃいます。

よって、「生活費が足りない」「火事で全焼した」といった

合理的な事情がなければ、売却することは本人の生活・財産を守ることにはつながらない。

このように家庭裁判所は考えるからです。

 

これが、「父の家が売れない」の正体です。

逆に、成年後見を利用した場合であっても、

「合理的な理由」があれば売却は可能だということです。

過度に心配をすることはありませんが、成年後見制度を利用することで、

一定の負担も発生しますので、総合的に考慮し、家族信託を使って対策をするか、

成年後見を利用するかをご判断ください!

 

↓ 成年後見を利用した場合の費用や問題については、こちら ↓

成年後見の費用の目安

家族信託が注目される理由 ②成年後見の問題点

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本日も最後までお読みいただきありがとうございました!

 

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