我々のように、お客様の生前・相続相談をお受けしてますと、障がいをもったお子さんがおり、親(自分)なき後の生活が心配というご相談をいただくことがあります。
財産の分け方について遺言書を残していても、実は遺言書は万能というわけではなく、想いを実現するのが困難なケースがあります。また成年後見制度も運用面の不自由さ、経済的負担の大きさから同様の問題があります。
そのような場合には家族信託を検討することで、解決できる場合があります。
今回は「家族信託」を利用して、以下のお悩みを一挙に解決した弊所の具体例をご紹介します!
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目次
妻が亡くなって、もう2年か
Aさん(74歳)は、同居している長女Cさんと夕飯を食べながら溜息をついています。
奥さんが亡くなってから、Aさんと長女のCさんは2人暮らしです。
Cさんは障がいをもっており、1人での生活は難しい状況です。
もし私がいなくなったと思うと、Cの今後の生活が心配だ。
長男に相談してみよう!
長男のBさんは既婚で子どもが2人います。
Bさんは実家とそれほど離れずに暮らしているので、すぐに相談をしに行けて、Aさんにとって非常に頼もしい存在です。
次の日、AさんはBさんに会いにいきました。
私に万が一があった後の
Cの生活を、Bに任せたいんだ
どうだろう?
うん、わかったよ。
Cのことはずっと心配だったんだ。
Dには頼めないし、僕しかいないからね
次男のDさんははっきり言って素行が悪く、音信不通の状態です。
Dには無理だろう。
それに、財産も渡したくないんだ 。
そうなんだね…。
でも、ウチでCと同居は難しいな。
奥さんもいるし…
Aさんには自宅不動産や預貯金があります。さらに収益不動産として駐車場も保有しているので、長女Cさんとの当面の生活資金に不安はありません。
心配なのは、自分が亡き後のCさんの生活です。
また、音信不通のⅮさんには財産を渡したくありません。
Cには将来的に、障がい者支援施設に入ってもらおうと思う。
その後のCの面倒を、Bにみてもらいたい。
大丈夫かい。
もちろんだよ。
あとはお金の問題だね。
入所する時も生活していくのにも費用がかかる。
Aさんは、自宅を含めた不動産を売却するなりして、Cさんの施設入所の費用に充ててもらおうと考えています。
後々の手続きや、生活費の管理も含めてBさんに任せたいのです。
うん。そして、Cは体も弱い。
もしBより先にCが亡くなったら、Bに財産の全てを渡したいんだ。
それまでの間と思って、頼みたい。
大丈夫。僕は構わないよ。
でも、どうしたらいいんだろう
それではここで、Aさんの心配事と想いをまとめてみましょう。
本当に長男Bは
長女Cの面倒を生涯みてくれるだろうか…
遺言で長女Cに遺産を残しても管理できないし、子供もいないので将来的にはDが相続することになる…
自分が認知症になったり、亡くなってしまったとしても、長女Cの生活を守りたい。
自分と長女Cが両方亡くなったあとは、財産をすべて長男Bに渡したい
このまま放っておいた場合、 Aさんが亡くなるとB・C・Dにそれぞれ財産が相続されてしまいます。
何度考えても、それではいけないとAさんは考えました。
そういえば、この間雑誌の「家族信託特集」で、
似たようなケースで「福祉型信託」が紹介されていたな。
相談してみたら?
家族信託…?大丈夫なのかそれは
そこで、Aさんはインターネットで「家族信託 専門家」などのように検索して、弊所のWEBサイトから無料相談を申し込まれました。
無料相談のあと、弊所からは「ご提案書」を作成し、お送りしました。
その中で我々は、以下のような解決策を提案しました。
長男Bさんを受託者として家族信託契約をします。そうすることで、Aさんの財産を管理・処分する権限は長男Bさんに託され、以後は長男BさんがAさんの財産を管理してAさんの老後の財産管理サポートしたり、長女Cさんの生活を財産的にサポートできます。
Aさん亡き後は、長男Bさんは長女Cさんの生活のために不動産や預貯金の管理を行います。
委託者:Aさん
受託者:Bさん
受益者:①Aさん、②Cさん
信託期間:Aさん・Cさんの死亡するまで
残余財産の帰属先:Bさん又はBさんの家族
もう一つ重要なのは、家族信託契約の中で遺言代用機能を活用することです。
具体的には契約書の中で、「長女C亡き後の財産については、承継先をB又はBの家族とする。」と定めておくのです。こうすれば、家族信託の効力が福祉の役割を無事終えたあと、信託財産は遺産分割協議の対象にならず、長男Bさんの一家に確実に渡すことができるようになります。
家族信託契約締結後の具体的な流れは以下のようになります。
この場合で家族信託をする一番のメリットは、Aさんが認知症になってしまった場合の「財産凍結対策」と、Aさんに万が一があった場合の長女Cの生活の安全の問題「親なきあと問題」の2つについて、Bさんに財産管理を受託することで、同時にケアできる点です。
Aさんの希望は、自分の預貯金から長女Cさんの生活のサポートにかかる費用を負担したり、いざという時には保有不動産を売却して、資金を捻出してほしいとのことでしたが、もし何もしないでAさんが認知症になり判断能力がなくなってしまうと、預金口座が凍結したり、不動産の売買等ができなくなってしまうため、Cさんの生活をサポートする資金に逼迫してしまいます。
Aさんには、収益不動産(駐車場)があったため、その管理を長男Bさんが担当することができます。
そして、その収益はAさんや長女Cさんの生活をサポートすることに使えるのです。
その結果、高齢になったAさんの管理の負担がなくなるだけではなく、その収益管理も任せられることで、AさんやCさんの生活を安定させることに繋がります。
Aさんに相続が発生した場合、長女Cさんに判断能力がないと遺産分割協議に参加することができず、相続手続きのためだけに成年後見制度を利用することになります。
その場合、法定後見を利用することになりますが、後見人の選任は裁判所での手続きが必要で、時間と手間が非常にかかり、相続手続きが難航してしまいます。
そうなると、相続手続きが完結できないため、長男Bさんが長女Cさんを支援したいと思っても当座の資金が凍結されてしまうため、サポートを継続できません。
一方で、家族信託契約で残余財産の取得者を決めておけば、その財産は遺産分割の対象から外れるため、遺産分割の手続きを要せずに長男Bさんに渡ります。
その結果、長男Bさんは長女Cさんを支援する資金に困ることがなく、支援を継続することができます。
このような家族信託契約をする場合、受託者である長男Bさんの権限と負担は大きくなりがちです。
ですので、本当に信頼して任せられる人がいない場合はそもそもこのような契約はできません。
そして、このケースのように兄弟が受託者を務める場合の注意点はもうひとつあります。
兄弟は年齢が近いことも多く、受託者である兄弟が年齢を原因にサポートが難しくなってしまうこともあります。
そのような場合、甥姪などの世代を第2受託者として関与させることを検討することもありますが、甥姪は関係性が薄いことも多いため、受託者の人選をする際にはよく検討する必要があります。
受託者の負担が大きくなってしまうことや、サポートを継続してくれるか不安といった部分を補完する方法としては、成年後見制度と併用するという手段もあります。
成年後見制度と併用することで、信託していない財産については「後見人」や「後見監督人」といった第三者が介在するため、受託者の負担軽減、持続性や公平性について安心できるといった効果が期待できます。
受託者以外にも信頼できる兄弟や親族の存在がある場合は、その人に信託監督人を任せることができます。
そうすることで、たった一人に強い権限を集約させることを避け、公平性が担保されることとなります。
相談するのは緊張したが、
Bの言う通り相談して良かった!
ホッとしたよ
スッキリと解決したね。
良かった良かった
いかがだったでしょうか。
障がいを持った子どもの支援に、家族信託は非常に有効で、2次承継先も指定できるので柔軟に対応できます。
ただし、家族信託の設計は、ご家庭ごとの事情や財産の状況によっても様々ですので、一概にこのやり方が最適であるとは言えません。
ですので、まずは家族信託の専門家に相談してみてください。
司法書士リーガル・コンサルティング&パートナーは、家族信託をはじめとした生前対策提案の専門家集団です。お客様のお悩みに真摯に耳を傾け、ご事情に即した、お客様にぴったりのプランをご提案いたします。
ご相談は無料で受け付けています。
まずは無料相談をお申込みください。提案書を作成いたしますので、お気軽にお問い合わせください。