2020.09.14

どこが悪かった?口約束と遺言書の制度が生んだ失敗事例

普段の生活の中で、なかなか「土地の権利の行方」なんて気にしませんよね。

それに、もしも自分に万が一の事があったら、なんて、あまり想像したくないですし、後のことは、しっかりしている家族が何とかするだろう、と楽観的に構えてしまうかもしれません。

しかし、どんなにご家族がしっかりしていても、どうにもならないこともあるのです。

今回は敢えて、「失敗例」を取り上げて、どうなってしまうのかをご紹介します!

Aさんの失敗例

Aさん(80)には息子が2人います。長男(55)も次男(50)も既婚ですが、長男には子がいません。

一方、次男には孫(22)がおり、Aさんは昔から可愛がってきました。

Aさんには自宅と、先祖代々継いできた土地、預貯金が2000万程あります。

Aさんは長男夫婦と同居していて、長男夫婦との関係は良好です。

ある日、Aさんは、次男から送られてきた孫の写真を見ながら「ゆくゆくは、この子にもここの土地を継いでもらいたい」と考えていました。

土地を孫に残したい!

そこで、Aさんは長男に相談して、自分→長男に相続が発生した後に、長男→次男の子(孫)に土地の権利が渡るように遺言書で残してくれるように頼みました。

※Aさんが遺言書で「長男に万が一の事があれば孫に…」とは書いても効果が無いのです。

その後、Aさんが亡くなり、長男が土地の権利を相続しました。

数年後、長男がAさんの言った通りに遺言書を作成しておこうと、法律の専門家に相談したところ、

法律の専門家
法律の専門家

それは、奥さまの遺留分を侵害しますから…

と渋い顔をされてしまいました。

長男には子どもがありませんから、この場合、長男の妻には当然相続できる分が発生します(遺留分といいます)。

遺言書でこれを侵害するような遺言は控えるべきだというのです。

ここで初めて長男は「しまった」と気付いたのです。

法律の専門家
法律の専門家

もし土地の権利を全て次男のお子さんに渡すとなると、奥さまの遺留分を侵害してしまいます

つまり、父の意思を実現するためには、長男の妻にもAさんが長男にしたのと同じように、

「次男の子に財産がいくように遺言書を残しておいてくれ

と頼まなければいけないのです。

しかし、長男の妻が遺言書を作成してくれるとは限りません。

その上、たとえ、自分の目の前で書いてくれたとしても、

法律の専門家
法律の専門家

遺言書はいつでも書き直しができてしまうので…

なんと、後日長男の妻が別の遺言書を作成したら、そちらが有効になるというのです!

このままでは、いずれ長男の妻に土地が渡り、その後、長男の妻の兄弟に土地の権利が流れていってしまうかもしれません。

今は亡きAさんの想いが実現するかは、完全に不透明となってしまい、長男は頭を抱えてしまいました。

どうすれば良かったのでしょうか

このケース、遺言書が万能であるように考えていたことと、大事な事を口約束で済ませてしまったことが良くありませんでした。

Aさんは、まず家族信託を検討するべきでした。


家族信託は、家族に「口約束」ではなく「契約」という形で想いを残す方法です。

家族信託契約をAさん・長男間で結んでおき、信託契約書の中で「長男が亡くなったら〇〇に、その次は〇〇に…」と順次土地を渡すことができます。

信託契約の内容(※一例です)

それでは、より具体的に見てみましょう。

Aさんを委託者とし、孫を受託者とします。
受益者を誰にするのかが問題となるのですが、

信託の内容 ・開始した時

・第1受益者:Aさん

・第2受益者:長男(Aさんが亡くなったら受益者になる)

・第3受益者:長男の妻(長男が亡くなったら受益者になる)

・残余財産の帰属先:孫(長男の妻が亡くなったら残余財産を孫へ渡す)

と、このようにしておけば、長男の妻が亡くなった後に、土地を次男の孫に渡すことができます。

まとめ

法律関係の情報をWEBや本で調べて、自分なりの道筋を見出すのは大変素晴らしいと思いますが、やはり限界があります。

かかる時間や、労力を考えると、あまり割に合いません。

あなたのご家族に本当にあった生前・相続対策をお探しなら、一度リーガル・パートナーへの相談も検討してみてください。

高齢者等の財産管理に関わる法律の仕組みひとつとっても、様々なものがあります。家族信託や遺言、生前贈与、不動産・株式の売却や資産の組み換えなど、様々な活動を総合的に取り入れて、それらを組み合わせることが『生前対策』においては、重要です。

これらの仕組みを比較検討したうえで、最善の選択を提案できることが専門家の使命であり、腕の見せ所なわけです。

最後まで、ご覧いただきありがとうございました。

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