家族信託とは、その家族に相応しい財産管理の方法を自分たちで柔軟に決めることができ、遺言や後見人、その他の制度に比べ、より家族の希望に応えることができる制度です。
そのような家族信託を求める場合、銀行などの金融機関に相談に行くことは、あまりおすすめできません。
なぜなら、銀行の信託では、不動産を信託できないことに加え、銀行というものは金融機関であり、ファイナンスのプロではありますが、家族信託をはじめとした「法務の専門家」はそこにいないからです。
このため、銀行に相談しても、自分たちに適した家族信託契約、その他の生前対策のアドバイスを期待することはできません。
自分たち家族に適した対策を検討したいのであれば、家族信託を始め、法務領域全般に詳しい専門家に相談することがおすすめです。
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目次
「家族信託を銀行に相談したら全然違う話に…」
先日ご相談いただいたお客様から伺った実際の話です。
家族信託で預貯金を管理するなら、銀行での『口座開設手続き』は欠かせません。
家族信託契約を結ぶと、ご家族(受託者)に財産の管理が任されます。任された財産のうち預貯金などの金銭は、元の口座から新しく開設した口座に預金を移して管理をします。
そこで、理想としては、金銭については「信託口口座」を新たに開設して、そちらに預金を移して管理します。
受託者は、自分の財産と信託財産を分けて管理(分別管理)しなくてはいけないからです。
このように、法務の専門家が提案する家族信託でも、一定の金融機関の関与があることから、「家族信託=金融機関の商品」というイメージを持っている方がいらっしゃるのかもしれません。
ところで、先日ご相談いただいたお客様に、こんな事があったそうです。
信託口口座を開設しようと銀行へ相談しに行った所、「取り扱っていない」と断られてしまい、また別の金融機関へ行ったが「是非とも自社の商事信託を」と、家族信託から商事信託へ切り返されてしまったというのです。
銀行などにも「家族信託」と銘打つ商品が有りますが、実際には、金融機関が現金を預かるだけの預金に近い金融商品であり、民事信託の仕組みを利用する『家族信託』とは、まったくの別物です。
この金融機関が提供している信託サービスを、商事信託といいます。
上記のお客様の例では、せっかく家族信託の相談をしに行ったのに、願いは叶わなかったとのことです。
※金融機関が自社の利益を優先するのは当然ですので、非難する意図はありません。
ちなみに、銀行の「信託」と名の付く商品のメリット・デメリットや、商事信託と家族信託の違いについてはこちらの記事が参考になります。
関連記事:5分でわかる、商事信託のメリット・デメリット【家族信託と何が違う?】
なぜこんなことが起こるのかというと、商事信託をしている会社にとっては、家族信託はただの集客のための撒き餌であり、本当は自社の信託商品や資産コンサルティングのサービスを購入して欲しいからなのです。
ビジネスとしての信託(商事信託)を取り扱う会社は、プライベートな信託(家族信託)を勧めることができないという宿命にあるということですね。
良い悪いではなく、その違いをぜひとも頭にいれ、あなたのご家庭にとって最高の選択をしてください!
専門家でも、どの制度を使うか迷う場面はありますが、基本的には
・不動産が信託財産となる。
・財産の承継先を細かく定めたい。
といった想いのある方でしたら、家族信託を検討すべきでしょうし、
・家族で手に負えないような多額の信託を予定している。
・高い手数料を払ってでもプロに資産運用を任せたい
などの事情があれば商事信託も候補にあがります。
なお、金融機関には家族信託に精通して実務経験豊富な専門家はほとんど居ないので、自社の商品の説明に終始してしまい、他の制度との比較は難しいと思われます。
今回のお話しを聞いて感じたのは、信託口口座について銀行や信託銀行に相談に出かけて、門前払いや商品の説明に終わってしまった人が全国にどれほど居るのでしょうか?
上記の例のような場合は、一通り案内を聞いたのち、その商品と他の制度(家族信託や遺言・後見)との比較が非常に大切です。
我々リーガル・コンサルティング&パートナーでお手伝いさせていただける場合は、お客様に代わり、金融機関にも適切な説明を致しますし、中立的な立場からお客様にとっての最適な提案をさせていただきます。
相続関係はもちろん、家族信託の実績も豊富な専門家にご連絡下さい。