2023.06.13

家族信託をどこに頼むか迷わない!相談先の選び方解説

家族信託は、主に認知症やその他の病気等によって、自分で財産の管理を行うことができなくなってしまった場合に備えて、財産の管理や処分を、別の人が適法に行うことができる仕組みです。

民法第三条の2という規定により、判断能力が亡くなってしまった人は契約行為等(例えば、売買や贈与の契約等)を有効に行うことができなくなります。

具体的には、不動産が売却できなかったり、預貯金を引き出せなくなったりということです。家族信託は、このような事態に備える財産管理の仕組みです。

でも、家族信託のメリットがわかっていても、このようにお悩みではないですか?

「いったいどこに相談すべきなのだろうか…?」

家族信託を扱う事業者は、司法書士・弁護士・税理士などの士業だけでなくコンサルティング会社や金融機関まで様々です。このコラムでは、家族信託をどこに相談すればいいのかを解説します!

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家族信託における税理士・弁護士役割

家族信託を行おうと思った場合、大きく分けて選択肢は「士業」と「士業以外」があるかと思います。まずは士業の中でも税理士と弁護士について特徴をお伝えします。

税理士

家族信託は、税理士に相談をすべきなのでしょうか?

答えは、「最終決定を委ねるべき相手ではない」という事になります。

理由は、「税理士は、税務の専門家であって法務の専門家ではないから」です。

税理士という国家資格は、税制度を深く理解し、具体的な申告書の作成に必要なアドバイスや申告書の作成、節税に関するアドバイスを行う存在です。

もちろん、税金の計算の前提となる法務知識は有していますが、信託に関する法律を深く理解し提案できるかというと、そういう訳ではないです(もちろん、どの士業でも良い事務所は自分たちの専門分野を飛び超えてアドバイスをくれるものですが)。

家族信託は、弁護士や司法書士という法律系国家資格の事務所でも数多く取り扱ったことはない事務所が殆どという、稀なお仕事です。

実際に私どもの事務所には、「顧問先の税理士さんに家族信託を聞いてみたところ、自分で調べてほしいと言われた」というお客様が何組もいらっしゃいます。

また、提携先の税理士さんから、「家族信託を検討している方がいるので紹介したい(自分では対応できないので)」というご相談も毎月のように発生しています。

以上のことから、家族信託相談の一時窓口として税理士さんを選択するのは、良いと思いますが、最終的な意思決定を税理士さんに委ねるのは妥当ではないと言えると思います。

弁護士

それでは、弁護士はどうでしょうか。先に述べた通り、家族信託は信託法という法律を深く理解する必要がある業務です。

よって、法律系の士業(弁護士や司法書士等)であれば対応ができそうに思えます。

これは弁護士にも司法書士にも当てはまることですが、まず前提として、「家族信託を実際に取り扱った経験があるかどうか」を確認しましょう。

取り扱った経験があるとした場合に、初めて検討の対象となることは抑えておきましょう。

そのうえで弁護士は、家族信託の相談先としては十分選択肢となります。

一方で、以下の点が司法書士と比べたときにデメリットかもしれません。

それは、「登記を行わない」という点です。

家族信託は、不動産が信託の対象となることが非常に多いです。

不動産を信託の対象とした場合、信託の登記という大事な手続きを行う必要があるのですが、一般的に弁護士さんは登記の代理を行わないため、家族信託を完結させた経験がない場合がほとんどです。

金融機関に相談すべき?

次に、金融機関について見ていきます。金融機関も、家族信託のサービスを提供するという会社がいくつもありますし、一件家族信託のような信託商品を取り扱っている会社もあります。

われわれとしては、家族信託については金融機関に相談すべきでないと考えておりますので、その3つの理由を解説します。

利益追求性

金融機関は事業会社ですので、自社の商品やサービスの販売が重要で、自社商品やサービスをより多く、高く販売し、利益を追求することが目的です。

例えば金融商品や投資商品、融資の利用、保険の契約などです。

一方で家族信託の場合、個々の家族のニーズや目的に合わせたカスタマイズ(本当に信託でいいのか?別の方法はないのか?といった事を検証し実行する事)が必要であり、金融商品の購入や保険の契約、融資などは多くの場合無関係です。

つまり、金融機関のサービス・商品ラインナップではお客様のお悩みを解決できない可能性があるのです。

しかし、金融機関は自社の商品やサービスを売らなければなりませんから、そのための手段として家族信託を利用する可能性があります。

結果、クライアント家族の最善の利益を追求するには制約が生じることとなります。

専門知識の不足

金融機関は金融商品や投資に関する知識を持っていますが、家族信託における法的な側面や税務の複雑さについては専門的な知識が不足していることがあります。

家族信託は法的な規制や運用のルールが存在し、税務面でも検証するポイントがあります。

適切なアドバイスやサポートを受けるためには、金融機関への相談では不十分でしょう。

総合的な検討の欠如

金融機関は通常、投資や金融商品・サービスを提供していますが、家族信託には財産管理や相続対策、法的な側面など多岐にわたる要素が関わっています。

金融機関だけで多岐にわたる相続の課題を総合的にサポートすることが難しく、必要な専門サービスを統合的に提供することは困難です。

以上みてきた通り、家族信託の相談を金融機関にすることは控えたほうが良いでしょう。

また、金融機関以外の会社にも同様の事が当てはまります。

具体的には、不動産会社やコンサルティング会社など、「本当に売りたい商品・他に主力サービスがある会社」に家族信託の相談をする際には、上記に記載したことを念頭に置いてください。

司法書士の役割と相談するメリット

家族信託の相談先は、税理士でも、弁護士でも、金融機関でもなく司法書士がお勧めです。

以下に、司法書士に相談するメリットをいくつか紹介します。

生前対策の専門的な知識と経験

司法書士は法的な知識と経験を持つ専門家です。

司法書士事務所の中には、家族信託の設計や運営に関する法的な手続きやルールに精通しており、信託契約の作成や解釈、相続手続きなどを適切に行うことができる事務所が存在しています。

また、良い事務所は必要な範囲で税務やに関する知識と優秀な提携先を持っており、相続を見据えた総合的なアドバイスを提供することができます。

パーソナライズされたアドバイス

司法書士は個々の家族のニーズや目的に合わせて、家族信託をカスタマイズすることができます。

家族の財産や資産状況、相続に関する特殊な要件などを考慮し、最適な枠組みを提案します。

時には、その提案が家族信託でないこともあるでしょう。

しかし、家族信託は手段であるため、目的に合わせて一人ひとりの家族の状況に合わせた個別のアドバイスをとおして、家族の最善の利益を追求することこそが重要なのです。

登記手続きまでワンストップ

家族信託の設定後、不動産を含めた信託であれば必ず信託の登記が必要となります。

この信託の登記は、司法書士の専門分野であり他の士業、金融機関には行うことができません。

家族信託の全工程を引き受けることができるのは、司法書士だけなのです。

独立性と中立性が高い

司法書士は公正かつ中立な立場で家族信託に関与します。

金融機関とは異なり、自社商品の販売や利益追求の制約がありません。

家族の最善の利益を考慮しながら、法的な規制や倫理的な観点から適切なアドバイスを提供します。

司法書士の選び方

さて、司法書士が最適な相談先だとしても、どの司法書士事務所であっても良いわけではありません。家族信託を実際に、一定の数の依頼を実行したことがある事務所は本当に一握りです。

また、家族信託ではない遺言や任意後見、贈与、相続税の観点も踏まえて総合的に提案ができる司法書士事務所を探すのはなかなか難しいと思います。

ここでは、司法書士の選び方を解説します。

家族信託の受任件数が50件以上

事務所のWEBサイトや広告の情報は冷静に見極めましょう。

例えば、「経験豊富」という記載があったとしても、何件程度契約をし、何件ほど実際の業務を行ったのかが解りません。

基本的に、法律の世界では実績に応じて能力が高まる傾向があります。

経験と品質が比例するということです。

よって、「実際にどの程度実行したのか」を確認することが、司法書士事務所を選ぶ際には有効でしょう。

業界的には、家族信託を50件以上行っていれば十分な専門性があるといってもよいと思います。

家族信託「だけ」を提案しない

お客様のご希望をかなえ、目的を達成するために本当に必要な事を提案してくれる専門家を選びましょう。

稀にですが、全てのご相談を家族信託という手法だけで解決しようとする専門家がおりますがこれは誤りです。

お客様のご希望をかなえる手段があるのであれば、必ず全ての選択肢を一度比較検討し、適切なものを明確な評価軸をもってお勧めすべきです。

最近は、ベンチャーキャピタルから出資を受けて家族信託のサービスを提供する司法書士やそれ以外の企業も存在しています。

そのような企業は、投資家を満足させるために契約数を伸ばし、業績成長が義務付けられていますので、お客様にとって最善な提案よりも、自社の成長が優先される可能性がありますので注意をしましょう。

セミナー・動画等の情報発信をしている

専門サービスのデメリットとして、品質はサービスを受けてみなければ解らないという点があります。目に見えない、触れられないものを買っていただくのでやむを得ないと思いますが、そのデメリットを補い、ある程度専門家の品質を推し量る方法があります。

それは、その事務所が行っているセミナーに参加してみたり、動画などを見て、質問などをしてみることです。

セミナーや動画での話し方、解りやすさ、質問への態度、回答の内容などをよく観察し、品質を見極めることができます。

このような情報の発信をしていない事務所さんの場合は、無料相談を受けるしかないでしょう。

隣接士業のネットワークがあるか

家族信託を検討する際には、必ず相続対策全体の事を検討することになります。

その場合、当然税務の視点や保険の検証など、様々な論点が発生します。

その時に、信頼のできる税理士や適切な事業者を手配できるかは重要です。

専門家をバラバラに手配して、コストだけがかさんでいくことのないように、確認しておくと安心です。

まとめ

本記事では、家族信託に関する相談を誰にすればよいか?について解説しました。

税理士や弁護士はそれぞれ専門的な知識と経験を持っていますが、家族信託においては司法書士がより適切なアドバイスを提供でき、最後の登記まで通貫して実行できるということがお分かりいただけたかと思います。

また、金融機関に相談する際には利益追求や専門的な知識の不足、総合的サービスの欠如などの問題が生じる可能性があります。

家族信託は家族の財産の管理や相続に関する問題を解決するための有益な手段です。

司法書士の専門知識とサポートを活用し、家族信託を成功させるための適切なステップを踏んでいきましょう。

私たちリーガル・コンサルティング&パートナーは、家族信託を含む相続対策についての総合的なアドバイスをご提供しています。

お悩みの際はぜひご相談ください。また、定期的にセミナー・メルマガ・YouTubeで情報の発信をしていますので、お気軽にご参加・ご視聴くださいね。

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