2020.03.19

法律のプロが教える家族信託の6つのデメリット。知らずに契約してはいけない?


テレビや新聞、最近ではヤフーニュースでも取り上げられ徐々に注目の集まる家族信託ですが、良い面ばかりではありません。

どんなデメリットがあるのかを知らずに契約してしまえば、その後にとても厄介なことになったり、「こんなはずでは・・・」と後悔することにもなります。

家族信託制度のデメリットとは何なのでしょうか。ご家族との話し合いの際になど、是非、お役立てください。

家族信託のデメリット

身上保護は対象外

家族信託はあくまでもご本人の財産管理を目的とします。

例えば、受託者となった方が委託者(ご本人)の施設への入所の手続きは「財産管理」とは言えません。

生活・療養看護に関する事務にあたりますので、「身上保護」あるいは「身上看護」となります。

家族信託ではこの身上保護は対象外なので、受託者として行うことができません。

ちなみに、成年後見人であれば、この「財産管理」と「身上保護」のどちらも行えます。

ただし、介護施設の入所契約や介護保険関連の役所系手続などは、親族の立場で十分事足りることも多いため、成年後見をしなければ身上監護が出来ないというわけではありません。

事務というのは法律行為のことです。つまり、契約を締結したり解除したりといった行為です。

市役所などに対して、住民票の取得を請求したり、要介護認定の請求をするのも法律行為になります。これらの行為を受託者として行うことはできません。

包括的な財産管理ができない

ご本人のすべての財産を信託することはできません。信託契約時にどの財産を信託するのかを決めるのですが、それ以外の財産は信託法の適用が無いからです。

例えば、信託開始後に受け取る予定の年金や、信託契約の後にご本人(委託者)の相続した財産は当然には信託財産にはなりません。

受託者に裁量がありすぎる

家族信託契約をしても当然に裁判所の選任する第三者が介入することはありません。

これはメリットでもありますがデメリットにもなります。

受託者には「報告義務」があります。すなわち受託者は、受益者に対して年に1度、信託事務の処理の状況や財産の状況を受益者に報告しなくてはなりません(信託法37条3項)。

ですが、もしも信託契約後に受益者の方が認知症になってしまったらどうでしょうか。

どんな報告をされても、見逃してしまうかもしれません。

また、この報告を、受益者から請求をすることもできますが(信託法38条1項)、認知症になってしまった後では適切な請求は難しいでしょう。

したがって、この報告義務は実質的には機能しなくなります。

とはいえそのような場合、受益者代理人や信託監督人という受益者の権利を保護する者をおくことで対処できます。

損益通算ができなくなる

損益通算とは、一定期間の利益と損失を相殺することです。

例えば、収益不動産を2つ所有している場合に、一方の不動産では100万円の損失が出てしまい、もう一方では100万円の利益が出たら、それらを相殺して所得が0円となります。

もしも、同じ状況で、損失の出た不動産を信託財産としていた場合は、損失は生じなかったものとみなされてしまい、もう一方の不動産で生じた利益100万円に対して課税がされてしまいます。

また、通常の不動産では100万円の損失が出ればその損失を翌年に繰越すこともできますが、信託財産としていると翌年へは繰越せません。

相談できる専門家が少ない

弁護士・司法書士・・税理士等の専門家や税務・福祉に関わる公務員、金融機関の方でもきちんと理解されている方は多くないのが実情です。

家族信託は、安心できる老後生活や円満な資産承継など、本人と家族の「想い」を伝えるために専門家と検討するものですが、法務・税務・後見制度等の横断した知識を駆使して対応しようという専門家が少ないのです。

長期間の契約になる

家族信託には、1次相続だけではなく2次相続以降の財産承継者まで選択できるという機能があります。

とても柔軟で便利な反面、世代を横断して、長期間資産の処分に制限をかけてしまうことにもなり得ます。

そうすると、かえって争族や不測の事態を誘発しかねないリスクになるのです。

何段階もの資産承継(数次相続)を指定できるからこそ、独りよがりにならず子や孫の想いも織り込んだ家族信託の設計が求められます。

まとめ

以上見てきたように、家族信託は万能というわけではなく、慎重に設計しなければ予測していなかったリスクに見舞われる場合も考えられます。

まずは家族信託の専門家にご自身とご家族の状況・そしてご自身の想いを伝えた上で、後悔のないような信託設計にして頂くようにして頂きたいです。


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