横浜市にお住まいのHさんより、Hさんのお父様が亡くなった後の相続でご相談です。
Hさんのお父様は現在先祖代々より受け継がれたご実家にお住まいです。実はこのご実家はお父様の妹さんとお父様の2名の共有の名義になっているそうです。最近TVで見たらしいのですが、認知症になってしまうと家の売買や相続に影響すると言っていたので将来が不安になってきたそうです。
お父様の妹さんにも子供(娘)がおりますが子供がいません。Hさんのお父様的にはHさんの子供(孫)に権利を譲っても良いと考えているみたいなのだそうです。
今後、Hさんのお父様とその妹さんが認知症になった場合や他界した場合に、相続や諸々の事が不安なので解決して安心したいとの事でした。
『当事務所からのご提案とリスク説明』
Hさんのお父様と妹さん(伯母)の年齢を考えると確かに認知症の発症リスクはゼロとは言えません。数年後には判断能力の喪失も考えられる可能性はございます。
仮に認知症を発症した場合は、そもそも自宅の管理は出来なくなると考えて良いと思います。また、どちらかに相続が発生した場合、自宅の共有持分が更に法定相続人による細分化される可能性もあります。自宅の修繕・管理・建て替え・売却時には共有者全員の合意が必要となりますし、事態が複雑化しトラブルを招くリスクもあります。
Hさんのお父様と妹さん(伯母)の意向が、Hさんに将来的には任せて継がせたいという意向がありましたので、家族信託(民事信託)のご提案をいたしました。
家族信託を利用する事でHさんが信託した財産をHさんの名義にし、お父様と妹さん(伯母)のどちらかが認知症を発症し、判断能力が無くなった場合でもHさんの判断で管理することができます。
信託設計1
委託者 :お父様
受託者 :Hさん
受益者 :お父様
信託財産 :自宅(お父様の持分)・預貯金
信託終了事由:お父様の死亡
帰属権利者 :Hさん
信託設計2
委託者 :妹さん(伯母)
受託者 :Hさん
受益者 :妹さん(伯母)
信託財産 :自宅(妹さんの持分)・預貯金(管理費用)
信託終了事由:妹さん(伯母)の死亡
帰属権利者 :Hさん
『結果』
家族信託のスキームは一般の方には少々難しい点がありますので、お父様と妹さん(伯母)Hさんに細かにご説明をし、自宅名義をHさんに変更し自宅の管理をすることで合意しました。
今回のご相談の場合は、後の相続も鑑みて信託契約事項にHさんのお父様の金融資産も含め運用管理できるようにしました、また妹さん(伯母)の信託契約においてはHさんには自宅の管理費用として少額に留めることとし、妹さん(伯母)の残りの金融資産は子供(娘)に相続させるため信託財産には組み入れないこととしました。
今回のケースは、決して珍しいものではありません。実家がその名義人のご兄弟同士で共有をしていたり、親族間で持分を共有しているケースもめずらしくありません。こういったケースですと往々にして相続時にトラブルとなったり、売却もスムーズにいかずいたずらに事を大きくなってしまいます。
特に、不動産(土地・建物)は、通常でも色々と処分や管理には手間がかかります。共有持分であった場合、それぞれの利害により一筋縄ではいかないケースも多く見られます。生前にキチンとした対策が必要です。
相続は最終的な場面にはなりますが、まずは認知症対策として家族信託を利用し同時に後の相続まで検討することは、残される家族にとっても大変良い事です。
今回のご相談は、お父様も妹さん(伯母)も元気でしっかりされていましたので、非常にスピーディーに信託契約を結ぶことができました。