「受託者の候補はいるが、本当に受益者のために働いてくれるだろうか」
いよいよ家族信託の情報も集め終わり、委託者・受託者・受益者にそれぞれ誰がなるのかの目星が付いたころ、ふとこんな不安がよぎったら、どうすればいいのでしょうか。
今回は、家族信託で設置可能な「信託監督人」についてご紹介いたします。
目次
例えば、受益者がまだ未成年だとします。
受益者には、受託者を監視する権限があります。受益者のために信託の事務を行うのが受託者ですし、信託契約でも目的はちゃんと定めたのだから、監視しなくてもいいような気もします。
でも、もし受託者が「受益者(未成年者)が相続した土地や建物を全て売却して、実質的に自分のものにしてしまおう」と企ててしまったら大変です。
「成年後見人の、財産の横領」の事件が、以前に多数報道されました。
不動産の売却までいかなくても、不正な財産の横領(使い込み)を受託者がしないとも限りません。※そこはご家族同士の信頼関係の構築が大事ではあるのですが
信託契約を結び、受託者に「不動産の管理・処分」をする権限が与えられていれば、先ほどのような不動産の売却もできてしまいます。その他にも、横領の手段はあるでしょう。
この場合、受益者は未成年者ですから、受託者の事務を適切に監視するのはとても困難です。
「受託者を監視してくれる人(第三者)が欲しい」
それなら、「信託監督人」を付けることができます。
信託監督人とは、簡単に言うと受益者の権利を代わりに行使してくれる人のことです。
先ほどの例のように、受益者が未成年又は精神上の障がいをもっている方だったとすると、「受託者を監視する」という受益者の権利を行使できません。
また、受益者の方が高齢である場合にも、受益者としての権利の行使は難しいかもしれません。
そんな時に、信託監督人が代わりにその受益者の権利を行使して、受託者が「不正な事務をしていないか」見守っていてくれるというわけです。
信託監督人は、一定の場合(未成年者や成年被後見人など)を除いて、だれでもなることができます。
だからと言って、信託期間中にいきなり「今日からあなたが信託監督人になってね!」と言えばいいのではなく、信託監督人が付く旨を信託契約の中でしっかりと定めなくてはいけません。
「受託者がしっかり働いてくれるのか心配」
となれば、その時点で、早めに専門家に相談してみましょう。信託監督人はだれでもなれるので、信頼するご親戚ののほか、弁護士や司法書士などの専門職も就くことができます。専門職に対する報酬が必要になることもあります。
「信託監督人を頼むのは、親戚か、専門職か」と悩みますよえね。
熟練のプロの目から見て「おかしい」と思う事務を咎めてくれた方が安心、という方が多いと思われますが、あくまで個別の状況に応じて変わってきますので、まずは専門家に相談した上で、そもそも信託が必要なのかどうかと言った点から、信託監督人の要否まで聞いてみましょう。
そして、家族信託の必要性が確認できたら、「提案書」の作成を受けてみましょう。財産や家族の状況を総合的に見てベストな対策は何か、提案書の中から確認して、それを基に改めて家族間で話し合いの機会を設けるのが最善です。
専門家に相談せず、自分で考えて自分で契約書を作ってみよう!というチャレンジはあまりおすすめしません。
信託監督人を付けるにしても、信託契約の中にその旨の条項を組み込まなくてはなりません。
例えば、「万が一にも自宅の売却は避けたい」ならば、「信託財産の売却、担保に組み入れるといった重要な行為を受託者が行う際には、信託監督人の同意が必要」としておいて、心配していた重大な不正が行われようとすれば必ず信託監督人の目に留まるようにできます。
これらは、正確な信託契約がなされていることが前提ですから、自分で作成するのは得策ではないのです。
さて、信託契約は非常に柔軟に組み立てられますから、例えば「自宅とマンション(収益不動産)」を信託財産として、「自宅の売却の時だけを信託監督人の同意を要する」としておくこともできますし、「一定額以上の支出の場合に同意を要する」などとすることもできますから、そうした具体的な希望があるなら専門家にその内容も含めて相談してみてください。
ただし、可能性として、信託監督人に就くことを専門職に依頼する場合、実質的に信託監督人が信託契約を乗っ取るような形になり、受託者が全く機能しなくなるなんてことも考えられますから、いずれにしても、最初に相談をするなら「実績・実務経験の豊富な」信頼できる専門家をおすすめします。
司法書士リーガル・パートナーでは、年間100件以上の相談実績と、それに伴う豊富な経験に基づいて、初回相談から提案書作成までを無料で承っています。この記事にあるような、個別具体的な事情を考慮した上で、最適な信託を設計できます。