2020.11.27

信託監督人が親の財産の見張り番になる

家族信託では、認知症対策の凍結回避機能、遺言のように使える承継機能が有名ですが、「信託監督人」という役割を設定することで、家族の財産管理に「平等感」をもたせることもでき、将来発生する相続の場面で、争いを避けることに貢献します。

この記事では、信託監督人とはどんな役割?といったことを解説いたします。

トラブルになった家族の状況

マモル
マモル

「 まさかこんなことになるとは…」



そう言って困り果てているのは、マモルさん56歳。最近父親が他界して、バタバタとした時期がようやく過ぎたある日の事、母から突然の電話が入った。

「お父さんの遺産がなくなってる!」

父親の銀行の口座に残っているはずの5000万円余りの行方が不明で、どうやら母と同居している兄のケンジが使いこんでいるようだというのだ。

兄のケンジは、亡くなった父親が所有する土地の上に自宅を建てて住んでいる。亡くなった父親の口座は、そのケンジが父親の生前から管理していた。

その兄が、父が亡くなった後、なかなか通帳を見せようとしなかった。その為、マモルはケンジに対する不信感を日頃から募らせていた。

母親も、ケンジの羽振りの良さを以前から怪しんでおり、この頃の、頑なに通帳を見せないケンジの態度に「使い込み」を確信したのだという。

このように、相続人(となり得る人)のうちの1人が親の預貯金を実質管理しているような状態というのは相続争い、いわゆる「争族」の火種となる可能性があります。

亡くなった方の財産は相続財産となります。今回の場合、亡くなった父親の遺言書が残っていなかったので、相続人の母・マモル・ケンジの3名で相続財産をどのように分けるのかを協議しなくてはいけません。



しかし先ほどのようなケースで、話し合いがまとまるでしょうか?



感情的な対立もありますから、そう簡単には遺産分割の話し合いはまとまらないでしょう。このような場合は、遺産分割調停という形で、家庭裁判所に申し立てることになります。

ところで、遺産分割の争いが生じるのは、多額の遺産のある家庭だけで、「自分には関係ない」と思っていませんか?

実は、これまで家庭裁判所で遺産分割事件として取り扱われた遺産分割事件のうち、遺産総額が5,000万円以下であるものが全体の4分の3以上となっています。相続争いというものは、決して多額の財産を保有している家族だけのものではないのです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

もしも、この家族が

『お父さんの生前に、財産の全体像を家族全体で話し合って、その管理・処分についての役割分担をしっかりとしていたら』

このような争いに発展したでしょうか?

①お父さんの生前の想いがちゃんと形として遺っている。

②目録を作成し、財産の全体像が明らかになっている。

③財産管理について、家族全員が役割を持ち、関与している。

こういった事実があると、相続の際に争いに発展しにくいのが現状です。

そしてこれらは、『家族信託』を使えばいっぺんに実現できます。

→家族信託の基本的な仕組みについてはこちら

特に今回は③の「家族全員が役割を持ち、関与している」に注目をしてみましょう。家族信託に関わる役割は、委託者、受託者、受益者のいつもの三役だけではなく、「信託監督人」という役割を設定することもできます。

信託監督人の仕事とは


信託監督人とは、家族信託契約の中で、信託の目的に照らし、受益者のために信託事務が適切に遂行されているかを受益者に代わって受託者を監督する立場の人です。

「信託監督人」の権限や監督方法は、原則自由に決めることができます。

信託監督人の仕事

①3ヵ月から半年に1度くらいのペースで、受託者が管理する信託口口座等の通帳を開示してもらうこと。

②大口の支出や使途不明金がないか、毎月の賃料収入がきちんと入金・管理されているか、また受託者が支払った請求書や領収書が適正かなどを確認すること。

③受益者(一般的には老親)に対して、定期又は不定期の財産給付(毎月の生活費等の手渡し等)がなされているか、受益者に困りごとや不満、不都合なことが起きていないかチェックすること。

※信託監督人に関してさらに詳しく知りたい方は、コチラの記事が参考になります。

信託監督人を置いて親の資産状況を管理できる

信託不動産の売却・購入や建物解体・建替え等の重要な財産を処分する際に、信託監督人の事前の承諾を要する旨の定めを置くことも多いです。

信託監督人の同意を得ないで行った法律行為・取引自体を法的に無効にすることはできませんが、それでも、家族が望まないやり方で財産が処分されてしまうという事態を未然に防ぐことには貢献します。

たとえば、信託不動産を受託者が売却する場合に、信託契約書において「信託監督人の事前の承諾が無ければ売却できない」としておけば、登記簿に信託監督人が誰なのかと併せて、売却するには信託監督人の承諾が必要である旨が記載されます。

なので、仲介する不動産業者や売買による所有権移転登記を担う司法書士も事前に認識でき、場合によってはストップをかけることになります。

まとめ

いかがだったでしょうか?

ここまで見てきたように、家族信託は「想いを形にする」「財産の全体像を明確にする」ことができるのはもちろん、「家族みんなが関与」するように設計するという使い方もできます。特に信託監督人を設置すれば、親の財産の状況を把握しつつ、受益者や家族が望まない財産の勝手な処分を抑止する効果が期待できます。

久しく、ご家族の一人が親の財産を実質的に管理しているのでしたら、一度現状を確認する意味でも、家族信託の利用を含めてご検討してみてはいかがでしょうか。

家族信託の専門家集団である司法書士リーガル・パートナーの無料相談に是非一度お越しください。

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