ご家族で良く話し合ったうえで、家族信託契約を結んだあとも、受託者となった方、受益者となった方、それぞれご不安な点もあるかと思います。
もしかすると、のちのち収益不動産のことでもめ事が起きるかもしれないなあ。。
息子を受託者にしたけれど、本当に大丈夫かしら
障害がある、認知症の家族を受益者にしたいんだけど・・・。
本当に様々ですね。
※なお、受託者になることになった方は、こちらの記事を参考にしてください。
関連記事:受託者になるなら必ず知っておきたい基礎知識【ゼロからわかる】
さて、そんな不安な方のために、頼もしい味方となってくれるのが「信託監督人・受益者代理人」です。
受益者保護関係人とも呼ばれる彼らは、受益者の利益を保護し、受託者の信託事務の遂行を監督してくれます。
では、具体的にどのような役割があり、選任することにどんなメリットがあるのでしょうか。
こちらで詳しく解説いたします。
※1、出典:『家族信託実務ガイド』日本法令,2020年,p.26
信託監督人とは、その名の通り、「監督」をする人のことです。
信託監督人が監督をするのは「受託者」です。
信託監督人を誰にするかは、基本的には、信託契約の際にご家族で話し合って決めます。
例えば、受託者が長男、監督人が次男といった具合です。
受託者を監督する人を選任するのはどのような場合でしょうか。
これは一言で申し上げると、「財産や受託者に心配事がある場合」です。
例えば、不動産に収益性があり運用を必要としたり、家族間でもめ事が起こりそうな場合です。
また、受託者に不動産を託すのがそもそも不安な時も必要とされます。
さらに、家族の間で透明性を確保したい時などもお勧めです。
「疑うわけではなく、オープンにしたい」といったケースですね。
上記のような場合、「信託に詳しくて受託者をしっかりと監督してくれる」人がいれば安心ですよね。
この信託監督人になるのに特別な資格は必要ありません(未成年者や成年被後見人はなれませんが)。誰が選任されるのかは事案によります。
専門職の方が就任する場合も考えられますが、ご親族を選任するのがお勧めです。
信託監督人の役割は先程申し上げた通り「受託者の監督」です。
受益者のために、誠実に受託者が業務を行っているかを監視してくれるので、受益者の方にとってはとても安心です。
その他にも、契約の中で、「実家を売却するには信託監督人の書面による同意を必要とする」としておけば、受託者の権限の乱用を防止することができます。
とはいえ、この同意権を信託監督人に与えすぎると後々問題になることも考えられますので、注意が必要です。
一方、受益者代理人は、受益者の代わりに受益権の行使をすることができます。こちらも名前の通り、受益者の代理人というわけです。
受益者代理人は必ずご家族で決めなくてはいけません。
受益者の方が複数いるなら、その全部を代理しても一部を代理しても構いません。
なお、受益者代理人をつけた場合、受益者の権限は「受託者の監視・監督の権限」以外について行使できなくなります。
では、受益者代理人を選任するのはどんな時でしょうか。
こちらも一言でいえば、「受益者本人の保護・支援を強く要する」時です。
例えば、以下のような、意思表示が困難な状況にある場合です。
・受益者本人に重い障害がある。
・受益者の所在が不明。
・受益者が複数であるいる。
信託監督人と同じく、受益者代理人となる為に特別な資格は必要ありません(未成年者や成年被後見人はなれません)。親族でもなることができます。
信託監督人と違うところは受益者の「代理人」であるという点です。
監督人と比べるとかなり責任が重いので、専門家と相談した上で慎重に決めた方がいいでしょう。
先日の記事の例のように、受益者の方が認知症になってしまっても、受益者代理人がいれば安心です。
その他、「委託者の死後も障害を持つ家族を支えたい」、「既に認知症の配偶者を受益者にしたい」場合に、
受益者代理人が代わりになって受益権を行使してくれるので非常に心強いのです。
また、例えば、受益者が複数いるとします。
親族が全員円満ならいいのですが、そうもいかない事は多々あると思います。
もし受益者の中に、受託者と仲が険悪な人がいたら、円滑な信託は難しいかもしれません。
受益者には受託者の監視権限がありますが、これを乱用して受託者に嫌がらせをしないとも限りません。
せっかく争族対策で家族信託を設計したのに、それでは目的が達成されなくなってしまいます。
そのような不安のある場合は、受益者代理人の選任の検討を要すると思われます。
信託監督人や受益者代理人に、誰を選任するのか、そもそも選任すべきかは、事案によって様々ですので、
そのご家族の想いや関係性、長期にわたる信託契約の行く末などを総合的に考慮する必要があります。
特に、ご家族の中で障害のある方や認知症の方がいて、その方を守りたいという「福祉型信託」においてはそのどちらかの選任をする前提で信託契約を設計することが多いです。
関連記事:図解でわかる!障がいをもった子を守る【福祉型信託】とは
より理想に近い形の家族信託が設計できるように、
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