〈家族信託で知っておきたい!受託者の役割〉

「受託者は僕が。そうは言ったものの、実際は何をすることになるんだろうか?」

「財産は息子に任せるとは言ったものの、受託者の仕事がちゃんとできるかな?」

家族信託を検討する過程で、多くの方がこのような不安を感じていると思います。ですが、恐れるようなことはありませんので、まずは受託者の基本的な役割を解説していきます。

 受託者の役割とは

 受託者ってどんな人?

まず、「受託者」とは何でしょうか?

例えば、自宅と投資用のマンションを所有しているお父さん(委託者)が「自分ももう80歳だし、そろそろ財産の管理は信頼できる誰かに任せたい。認知症になってしまって財産が凍結しても大変だ。」と考えた場合

家族信託は、その「誰か」がいる場合に大きなメリットがある制度ですし、その「誰か」がいなければ始まりません。そしてそれが「受託者」です。

受託者の役割は、「信託契約に従って、本人のために財産を管理すること」です。

例えば、マンションを人に賃貸したり、大きな修繕を行ったりするのは「管理」にあたります。マンションをいいタイミングで売却して、委託者の介護費用にあてたり、銀行から融資を受けてマンションの建て替えを計画したりすることもできます。

「オーナーみたいなものかな。家賃収入は誰のもの?」

という疑問が湧くかもしれませんが、家賃収入などは「受益者」つまり委託者のものです。法律上は受益者をどなたに設定しても構いませんが、贈与税課税がありますので、原則的に委託者がそのまま受益者となります。ですので、受託者はその家賃収入を、生活費や、介護費といった委託者の必要な支出に使うことになります。

「息子には財産管理を任せながら、家賃収入から毎月いくらいくら振り込んでもらおう。」という取り決めが可能です。

 受託者は信託契約に従う必要がある

受託者が財産の管理を一任されている立場とはいえ、例えば受託者が「よし、マンションを売却して株と外貨に替えて運用しよう!」

となってしまったら困りますよね?

しかしそこは、安心してください。受託者は信託財産を自由にできるわけではありません。

受託者は、あくまで信託の目的を達成するために、信託契約に書かれていることだけを行えます。

 受託者に義務はある?

また、受託者の義務は大きく3つあります。

善管注意義務: 信託財産を守る義務のことです。人から任された財産なのだから、当然といえば当然です。自分の財産よりも非常に注意しなければ、何かあった時の「過失」が認められやすいです。

 忠実義務 :受託者は、あくまでも受益者のために仕事をしなければいけません。自分のためや、受益者以外の第三者のために管理処分をすることは絶対に出来ません。

 分別管理義務: 受託者は、自分の財産と信託財産を分けて管理しなくてはいけません。

 受託者にはどんな人がなるべき?

上記のような義務があるわけですから、受託者にはしっかりと財産を管理できる人になってもらわなければ困ります。未成年者、成年被後見人及び被保佐人は、受託者になれません。

「じゃあ息子は受託者になれるな。少しリスクの高い資産運用に興味があるようだが…。」

受託者になれる方なら誰でもいいということではありません。ご本人が信頼できる、どちらかと言えばご家族・ご親族の中の真面目で堅実な方がなられた方がいいでしょう。ご友人でも構いませんが、非常に重要な役回りですので是非とも慎重にお選びください。

例えば、「長男だけではちょっと心配だな。」というような場合には、他の兄弟のかたを信託監督人(信託財産の見張り番のような役割)として置いたり、委託者に「同意権・指図権」(特定の行為は委託者の指図や同意がなければ、できないとすること)などを設定することも有効です。

 受託者がなくなった場合は?

ちなみに、受託者が死亡してしまった時は、新受託者の選任を急いだ方がいいです。

新受託者も選任されない状態が1年間継続すると、信託が終了します(信託法第163条3号)。

そうならないために、可能であればあらかじめ「第二受託者」(財産管理のバトンタッチ役)を定めておく方がいいでしょう。

なお、第二受託者の候補が見当たらないのであれば、法人を設立して受託者にしておくこともできます。そうすれば、「受託者の死亡」というリスクは避けることが出来ます。一方で、その法人の役員となる人物の確保は必要です。

 まとめ

いかがだったでしょうか。
受託者の役割、義務など、大まかにご理解頂けたかと思います。

最近では、「資産の生前対策の重要性」が叫ばれていますが、急がなければデメリットを受けてしまうのは、殆どの場合「認知症対策」です「認知症対策」だけでも家族信託で早めにしておけば、財産の凍結リスクを回避しながら、受託者に不動産や預金、株式等の資産管理の面倒な部分を引き継ぎ、収益は委託者自身が確保しつつ、ゆっくりと株や不動産管理のノウハウを伝授していくことだってできます。

最後までご覧いただき、ありがとうございした。