2018.10.15

金融機関は、なぜ口座を凍結するのか

おはようございます!

本日(2018年10月15日)、日本経済新聞に

 

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「 認知症患者、預金引き出せず

  生活費も逼迫の恐れ 
  ルポ迫真 認知症とお金(1) 」

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と題して、認知症と財産の管理・家族信託に触れた記事が

掲載されていました。

要約すると…

 

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 ・金融機関は、認知症とわかると一律「凍結」という硬直的な対応

 ・支援するご家族にも多くの負担がある

 ・日本全体で見て、認知症高齢者の保有する資産は200兆円と試算

 ・上記の資産が(銀行の硬直的対応によって)凍結されると、日本経済にも重荷

 

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ざっくりこんな内容です。

 

おっしゃる通りで、金融機関は預金者の状態が

認知症であると解ると、口座の引出や振り込みなどに

制限をかけることがあります。

これにより、成年後見を利用するなどしないと、

その口座内にある預金を利用することができなくなります。

この状態を「凍結」と呼んでいます。

確かに、これにより膨大な数の口座が凍結されてしまうと、

本来利用可能な資産が利用できなくなり、

個人にとっても地方・国にとっても損失がありそうです。

 

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家族信託のご相談にいらしたお客様からも

質問をいただくことが多いのですが、

 

なぜ金融機関はこのような対応をするのでしょうか?

 

それは、

 

「本人の意思によらない引出や振り込みをした場合、

 金融機関が、本人や親族から責任を問われる可能性がある」

 

 

からです。

 

たとえば、認知症の父に二人の息子がいたとします。

長男が、父の認知症に乗じて暗証番号などを把握し、

不正に預金を使用しようとしています。

 

その場合、金融機関は、認知症の事実を知ってしまったら

預金等の払い戻しに応じることは困難になります。

なぜなら、認知症の父には、意思能力(自分で判断する能力)がなく、

その払い戻しは父の意思によるものとは言い難いからです。

(意思能力があれば、「俺の代わりに引き出しておいてくれ。」という委任もあり得ます。)

ここで払い戻しに応じた場合、例えば父の相続発生時に、次男から金融機関に対して、

 

「あの時父が認知症であることは窓口で把握していたはずだ。

 父の意思によらない払い戻しであることは明らかだ。

 払い戻しに応じなければ、損害が発生することはなかったので、

 消えてしまったお金を損害賠償として支払え」

 

という主張がされかねません。

なぜなら、金融機関は、あくまで父との契約により、父のお金を預かっているからです。

父の意思によらない引出であると疑うような事情がある場合(認知症のように思えた場合)は、

支払ってはいけないのです。

 

金融機関としては、上記のような相続等のもめごとに巻き込まれるのであれば、

凍結という方法で、ひとまず現状維持し、成年後見の開始などで

状況が改善するのを待ちたいところです。

 

本人の預金を守るという観点を強調すると、

必要な対応ですし、不正利用・横領の可能性がないようなご家族の場合

(ほとんどはこちらなのではないでしょうか)、

行き過ぎた対応ということになってしまい、悩ましい限りです。

 

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以上が、「金融機関が口座を凍結する理由」です。

凍結によって不便を被らないように、

何よりご本人のために必要なときに必要な資産を

利用でき、快適なくらしを継続するためにも

家族信託の利用は検討の余地ありです。

 

本日もお読みいただき、ありがとうございました!

 

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<参考裁判例>

  1. [1]東京地裁平成26年8月21日判決
    (『金融・商事判例』1453号56ページ)
  2. [2]釧路地裁平成24年10月4日判決
    (『金融・商事判例』1407号28ページ、
  3.  同じ日に預金者の妻が同じ銀行の別支店で2度預金を払い戻したことについて、
  4.  2度目は銀行に過失があると認定した)
  5. [3]東京地裁平成24年1月25日判決
    (『判例時報』2147号63ページ、盗難されたキャッシュカードのATMでの払い戻しについて、
  6.  銀行に預金者保護法の補てん責任を認めた)
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